無料で行けた札幌。美味しいものを食べ歩いた3日間 9 - 和光荘②(2023年11月30日/3日め)
2023年11月30日 雪が舞う、和光荘で。(北海道小樽市)
11月30日(水)- 3日め
橋を渡り終えると、その先に、
雪に覆われた和光荘が現れました。
来た。
ほんとうに、和光荘に来れたんだ…。
胸が震えました。
雪に足をうずめながら、
玄関に向かって、ただ無心に歩きました。
全景が見えました。今でも、写真で見たままの姿でいてくれたことがうれしく、なにか、胸がしめつけられるような気がしました。
【和光荘】
1922年(大正11年)、北の誉酒造(1890年/明治23年創業)の2代目社長である野口喜一郎の自邸として、小樽市に建築された洋館です。木造4階建て、一部鉄筋コンクリート造り。パリに端を発するアール・デコの幾何学的な装飾を基調とする、洋風のデザインです。その特徴は、野口喜一郎の父・野口吉次郎(北の誉酒造創業者)の郷里である、金沢市の伝統的な建築技術を取り入れた和室などを組み合わせていること。さらに、全国の歴史的建造物にみられる「小川三知によるステンドグラス」など、様々な装飾品があることでも知られています。
もとは個人住宅でしたが、この建物は、その後流転の運命をたどります。
1948年(昭和23年)和光産業によるホテルとして開業。
1950年(昭和25年)北海ホテルが取得。
1956年(昭和31年)再び、北の誉酒造が取得。
この間に、
1954年(昭和29年)昭和天皇夫妻の北海道巡幸に際しての宿泊所となる。
1958年(昭和33年)には第125代天皇/上皇明仁が皇太子時代に宿泊。
など、華々しい時期もあったのですが…。
1966年(昭和41年)経営難により、ホテル業を廃業。
その後も、流転の運命は続きます。
2009年(平成21年)野口喜一郎の孫の野口禮二(北の誉酒造の4代目社長)が北の誉酒造から買い取る。
2015年(平成27年)北の誉酒造が、オエノンホールディングスに吸収される。
和光荘の元所有者であった北の誉酒造は売却されましたが、その直前に、野口家が和光荘を取得していたため、建物は守られた、という形になりました。その後、野口家が私費を投じて保守・修繕を行い、建物の外装・内装だけでなく、書籍やニップゲームなどがそのまま保管されました。そして、同年4月から、予約制・有料で公開されるようになりました。
2018年(平成30年)中国系企業「元大夕張鹿鳴館」が本施設を買収。
2023年(令和5年)蒙泰株式会社に転売。代表者の奥鳳廷氏は、内モンゴル自治区に本社を置く蒙泰集団のトップ。
なんとも…。
次々と所有者が変わる中、
よくぞ残っていてくれた、と思います。
和光荘を見ながら、感慨にふけっていたのですが、ふと気づくと、MIYOの前を歩いていたはずの多動夫が、大興奮で階段を上がり、2階部分にいるではありませんか。
このときに、夫が撮ったMIYO。「あれほどいやがっていたくせに…。このやろ~。」と思ってるところです。😅
さらに近づいてみました。アーチが並ぶ1階部分が、アール・デコ風なのでしょうか。
この扉の内側は、ダイニングルームになっていました。
中はほの暗くて、ぼんやりと調度品が見えるだけでした。これを写真に撮るのはムリ、と思っていたのですが、多動夫、どんなワザを使ったのか、こんな写真を撮っていました。
どうやって撮ったの?😮
その上に続く、2階から4階部分。2階の右側にあるのが、玄関のようです。
その玄関へと続く階段。
階段を上がって、玄関部分に行ってみます。
階段からは、母屋の右側部分がよく見えました。夏には、緑色のツタが絡まって、美しい外観になる部分です。
その奥にも、平屋の家屋があります。
こちらは、使用人の住まいだったのかもしれません。
山の斜面には、見晴らし小屋のようなものもあります。
さて、階段を上がりきると、そこは細長いバルコニーになっていました。そのバルコニーに面した家屋部分の窓も、美しいデザインです。
バルコニーのいちばん手前に、玄関がありました。
蒙泰 (MENG TAI) 集団・蒙泰株式会社
…と書いてありました。
ああ、ほんとうに、
モンゴル系の会社に売却されたんだな…と。
わかっていたことでしたが、胸の中には、
なにか寂しい気持ちが募ります。
日本の貴重な文化財が、こうして、
外国の企業に売却されていく。
それも、アメリカでもヨーロッパでもなく、
アジアの企業なのです。
そんな時代なんだな…と。
建物の2階正面には、玄関部分からさらにバルコニーが延びています。
喜びまくって、どんどん先に行ってしまう多動夫。ほんと、調子がいいなあ…。😔
バルコニーに立って、眼下に広がる雪の世界を見下ろしました。
バルコニーの壁に取り付けられた電灯と、ドアの取っ手部分。温かみを感じるデザインです。
バルコニーを端まで歩き、その先へ進もうとして、ふと、振り返りました。すると、雪で覆われた床面が、ほんの少しだけ顔を出していたので、雪をはらってみました。
床は、モザイクタイルで彩られていました。その愛らしい模様に、心魅かれました。
バルコニーを抜けると、母屋の左側面(2階から4階)が見えます。2階は和風で、3階と4階は洋風になっていました。
そして目の前に広がるのは、雪で覆われた庭園。
人の足跡がひとつもなく、見えるのは雪ばかり。
この雪はどれくらいの深さなのか、
そして、この雪の下に池があるのか、
それとも飛び石でもあるのか…。
もう全くわからない状態です。😅
うっかり足を踏み入れたら、
たいへんなことになるかも…と思いながら、
ただ、白い世界を眺めていました。
(つづく)