MIYO'S WEBSITE-全盲難聴のんたんの育児記録と卵巣ガンで思ったこと

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは21歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。

のんたんの冬休み-52 おいしいものを食べる、ベトナム8日間おトク旅 - おはな、しゅん(5日目)

2017年12月28日 フエで朝ごはん。おいしいね!(全盲難聴・のんたん 22歳)


長男は、22歳。
18歳で盲学校高等部を卒業し、
視覚障害者の訓練施設「S園」に入所しました。
以来4年間、S園で生活しています。


5月の連休、夏休み、冬休み、などのときには、
S園から帰宅し、いっしょに過ごすのですが、
久しぶりに長男に会うと、
思いがけず、うれしいサプライズに遭遇することがあります。
以前なら、長男が知らなかったはずのこと、
できなかったはずのこと。
そんなことが、いつのまにかできるようになっているからです。


ベトナムに到着したばかりのころ、ATMにさわった長男が、
「おかね、おかね」
と言い、家族みんなでびっくりした話は、以前書きました。



今日は、もうひとつの「うれしかったこと」について、お話しします。
それは、「おはな、しゅん」です。


風邪をひいて鼻水がでると、普通は、ティッシュで鼻をかみますよね。
「チーーン!」
なんて。


ところが、長男は、この、「鼻をかむ」ということが、できません。
というか、知りません。
以前、「麺をすする」というのは、
見えて聞こえる子供が、他の人がするのを見て、
自然に覚えることだ、ということを書きました。
見て聞いて、自然に知ることができない長男には、
「すする」という行為がわからないのです。



それと同じように、「鼻をかむ」という行為も、
長男は知ることができませんでした。
これもやはり、他の人がするのを見て、
自然に覚えていくものだったんですね。


自宅で私たちと過ごした18年のあいだ、
長男はとうとう、「鼻をかむ」ことができませんでした。


風邪をひいて鼻水がでても、「チーン」ができないのです。
だらだらとでてくる鼻水を、
常に、タオルでふきとらなければなりません。
長男自身も、うっとうしかったと思います。


「鼻をかむ」ということを、何度もおしえようとしましたが、
ティッシュを鼻にあてて、
「のんたん、おはなをかむんだよ。チーン! フンッ!」
とか、あれこれ言ってみても、
どうしてもうまくいきません。


「鼻をかむ」ということが理解できないので、
長男の鼻にティッシュをあてて、
「おはな、かんで」と言われると、
長男はいつも、鼻をすすってしまうのでした。


「これができるようになれば、
 のんたんもラクなのにな…。」
と、いつも思っていました。


それから4年。
今回、ベトナムをいっしょに旅行しているあいだに、
少ーしだけ、鼻をかめるようになった長男を、
ついに発見!


朝食の後、鼻水がでていたので、
鼻にティッシュをあててみました。
「おはな、しゅん だよ」
と、だめもとで言ってみたところ、
「フン」「フン」と、少しずつですが、
鼻水を鼻の外へ出しているではありませんか!


これには、家族全員、びっくり。
だって、18年間、どうしても教えることができなかったのですから。


「うわ~ のんたんが、鼻、かんでる!
 のんたん、すごいねえ!
 おはな、しゅん ができるようになったんだねえ。
 すごいねえ!」
と言うと、長男も、得意そうに、どや顔です。^^


自宅を離れて、S園で生活するようになって、
いろんなことが、少しずつ、少しずつ、できるようになっている、長男。
S園に入所するとき、理事長先生から、
「だいじょうぶ。
 一年後には、いろんなことができるようになっていますよ。
 必ず、成長しますよ。」
と言われたことを、今も、忘れることができません。


そして、それから4年たった今、長男は本当に、
少しずつ、少しずつですが、
世界を広げています。
ATMをさわって、「おかね」と言い、
「つめきり」を覚え、「鼻をかむ」ことができるようになった長男。
この旅行中に、長男は私たちに、
なんとたくさんの「驚き」をくれたことでしょうか。



普通に見えて聞こえていれば、自然にわかることが、
長男にはなかなか理解できません。
それが、「盲ろう」という障害です。
でも、ゆっくりと、ゆっくりとではあっても、
できることが増えている。
そんなことを、このベトナム旅行中に、何度も実感できたのは、
とてもうれしいことでした。


これからは、風邪をひいても、おはながかめるね、のんたん…。^^


でも、ひとつだけ不思議なのは、
「S園の方は、『鼻をかむ』ことを、
 どうやって長男におしえたのか?」
ということです。


私たちが、18年かけてもおしえきれなかったことなのに、
なんとなーく、いつのまにか、できるようにしてしまう。
S園って、ほんとうにすごい。


この旅の途中で、長男の成長ぶりを見るにつけ、
S園には、何度も何度も、頭が下がる思いでした。
けれど、私たちが本当に驚いたできごとは、
このもっとあとで。
ベトナム最後の日に起こるのですが、
そのことは、またのちほど、書きたいと思います。^^


この日の朝食のようすです。


(つづく)

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