今でよかった
あれは、2008年12月のことでした。
微熱が、10日以上続いたことがありました。
「ただのカゼ」と信じて疑わなかった私は、
毎日、バッファリンを飲んで熱を下げ、出勤し続けました。
それでも、一応、週末に、
近所の産婦人科クリニックに行ってみました。
持病で卵巣嚢腫を抱えていたので、
体調不良はそのせいかもしれない、と思ったのです。
検査をすると、医師から、
「腫瘍マーカーの数値が、普通の人の10倍あります。
ガンの疑いがあるので、紹介状を書きます。」
と言われました。
当時、全盲・難聴の長男は、中学一年生でした。
入院・手術のあいだ、長男をどうすればいいのか。
それだけではなく、もしもガンが治らず、自分が死んだら、
誰が長男を育てていくのか。
健常児であれば、夫ひとりでもなんとかなるでしょう。
でも、障害のある長男を残していけば、
いろいろなことのしわ寄せは、結局、長男自身に行きます。
それを考えると、ただ、涙がでました。
「この子をどうするのか。」
ガンかも知れない、と言われて、
私の頭の中にあったのは、ただそれだけでした。
結局、そのときは、ガンではなく、卵巣嚢腫が原因の腹膜炎でした。
けれど、
「ガンの疑い」
と言われたときの切なさを思いだすと、
今でも涙がでてきます。
あれから8年あまりが過ぎました。
今、本当のガンになってしまったけれど、
あのときほど悲しい思いはしていません。
いちばんの気がかりだった長男が、
3年前に自立し、家を出たからです。
「私が病気になっても、もう、長男が困ることはない。」
そう思うと、不思議に、穏やかな気持ちになります。
ガンになって、いいはずがない。
ガンになってよかったなんて、思えるわけがない。
それでも、この病気になるのが、私の運命なのだったとしたら、
これまでの人生のどこかで、ガンになるしかなかったのだとしたら、
「それが今でよかった。」
と思ってしまうのです。
その他の記録については、
ガンになって
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ガンになって、やったこと
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