のんたんの冬休み-14 おいしいものを食べる、ベトナム8日間おトク旅 10 - 鍾乳洞へ行くよ!(2017年12月25日/2日め)
2017年12月25日 ハロン湾クルージングで、おかあさんのお話を、耳を澄ませて聴いています。
(全盲難聴・のんたん 22歳)
12月25日
奇岩群はまだまだ続きましたが、
私と長男は船室に戻り、食事を続けました。
長男の食事は、底の深いお茶碗に取り分けることが多いです。
こうすると、全盲の長男でも食べやすいからです。
バナナを食べながら、大笑い。
船室でのんびりしているうちに、とある島に到着しました。
ガイドのティンさんがやってきて、言いました。
「これから、島の鍾乳洞に行きます。
階段を200くらい上がるので、たいへんです。
みなさんは、船に残りますか?」
私と夫は、瞬時に答えていました。
「いきます!」(笑)
「えっ 行くの?」
と、ティンさんはびっくり。
全盲の長男がいっしょなので、
きっと、島に上陸しないだろう、と思っていたようです。
でも、崖をのぼるわけでもないし。
階段が200くらいなら、なんとかなるでしょう。
「のんたん、船をおりるよ。
これから、階段をいっぱいのぼるよ~。」
と、私に言われた長男。
立ち上がり、私といっしょに、はりきって上陸しました。
港に着いたときに、ガイドさんが購入してくれたチケット。(ひとり200円)
島に上陸するためには、このチケットが必要です。
島の岩山。これからここを登ります。
鍾乳洞に行っても、
長男はそれを見ることができません。
でも、だからと言って、家族全員で行くことをあきらめるよりも、
階段を上っていくというプロセスを、
長男といっしょに楽しむことができれば、
それでいいじゃない、と思ったのです。
というわけで、ツアーの他の方々にまじって、
私たちも出発しました。
長男の左側に立ち、
長男の左手と右肩に私の両手を添えて、
声をかけます。
「のんたん、これから、かいだんをのぼるよ。
せ~の! 1、2、3、4、5、6…」
階段を一段一段数える、私のかけ声に合わせて、
長男は足をあげ、上手に上っていきます。
いつもいっしょに歩いているふたりですもの。
長男と私の呼吸はぴったり。
まるで、二人三脚でもしているかのように、
ふたりで歩調を合わせて、階段を一段一段上がっていきました。
しばらく上ると、階段が終わります。
「はい、ここでおわり~。
ここから、歩くよ。」
長男、なんの迷いもなく、上るのをやめ、私と歩きます。
ふたたび、階段です。
「のんたん、また上るよ!
せ~の! 1、2、3、4、5、6…」
ときどき休んで、
「のんたん! すごいよ! えらいねえ! じょうずだねぇ!」
と褒めると、長男、ちょっととくいそう。
「これくらい、平気だよ!」
とでも言いたげに、どんどん階段を上がってくれました。
そんなふうにして、一度もつまづいたり転んだりすることなく、
とうとう200段をあがりきり、鍾乳洞に到着!
「のんたーん。階段、おわりで~す。
よくがんばったねえ! すごいねえ!
おかあさん、びっくりだよ~!!」
と言うと、長男はうれしそうに笑っていました。
(つづく)