MIYO'S WEBSITE-全盲難聴のんたんの育児記録と卵巣ガンで思ったこと

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは21歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。

のんたんの冬休み-96 おいしいものを食べる、ベトナム8日間おトク旅 - 4年が過ぎて。(7日目)

2014年4月1日 長男がS園に入所した日です。桜が、悲しいほどに満開でした。(全盲難聴・のんたん 18歳)



4年前。
それは、2014年の春のことです。
3月に、盲学校の高等部を卒業した長男は、
翌4月から、盲重複障害者のための支援施設である、S園での生活を、
スタートさせました。


その、「S園入所式」でのことです。
S園内のホールで、先輩の園生全員がそろって着席する中、式が始まりました。
「新入生」の長男も、先輩の園生たち(60人くらいです)といっしょに、
イスに座っていました。


私は、少し離れた父母席から、長男を見守りました。
ずっとあこがれていたS園にいることが、
長男はよほどうれしかったのでしょう。
ちょっと興奮気味になっているようでした。


理事長先生や園長先生のお話が続く中、
他の園生は、私語ひとつすることなく、全員が静かに座っているのに、
時々、長男だけが勝手におしゃべりをする声が聞こえます。
そんな長男を、私は、はらはらしながら見ていました。


ようやく式が終わり、園生が全員退場したあと、
私と夫も帰宅することになりました。
帰り際、S園のT課長にごあいさつしたのですが、私は、
「長男が静かにしていられなくて、申し訳ございませんでした。」
とつい、お詫びしてしまいました。


そのとき、T課長が、こう応じられたのです。
「のぞみくん、そんなにしゃべっていましたか?
 式の前に、『大事な式だから、静かにしようね』と言ってあったのですが・・・。」
私は、ますます、恐縮してしまいました。


ところが、T課長は、さらに、こうおっしゃったのです。
「きっと、私たちの説明がたりなかったのですね。
 次からは、のぞみくんに理解してもらえるよう、
 私たちも、もっとていねいに説明するようにしていきます。」


びっくりしました。


長男が静かにしていられなかったのは、長男のせいではない。
長男が事情を理解できるように、園がもっと説明するべきだった。


…と、T課長はおっしゃったのです。


そんな考え方もあるのだな、と、驚きました。
そうは言っても、一度言ってわかるようなら、苦労はしません。
私たち親だって、それまでの18年間、
言っても言っても、長男に伝え切れなかったことは、
たくさんあるわけですから・・・(苦笑)。


その日は、理事長先生から、
「大丈夫。みんな、びっくりするくらい、成長しますよ。
 一年後には、いろんなことができるようになっていますからね。」
と励ましていただき、S園をあとにしたのでした。
理事長先生のお言葉は、ありがたかったけれど、
「そんなに簡単に変わるのかなあ・・・。」
と、半信半疑だったことは、否定できません。


このときのできごとを、私はいつまでも、忘れることができませんでした。
S園のみなさんのことばが、あまりにも誠実で、あたたかかったからです。
もう、4年も前の話です。


18歳だった長男は、S園での生活を続け、22歳になりました。
その長男が、今、私のとなりにいます。
70分もの長い時間を、真剣な表情で、ずっと、黙って座っています。



私から、「静かにしようね。」と言われ、
自分で自分の口を押さえ、そのままの姿勢で、
長男はずっと、パーフォーマンスを聞いていました。
私は、4年前のT課長のことばを、思い出さずにはいられませんでした。


「きっと、私たちの説明がたりなかったのですね。
 次からは、のぞみくんに理解してもらえるよう、
 私たちも、もっとていねいに説明するようにしていきます。」


S園の皆様が、あれからずっと、その努力を続けてくださっていたことは、
今、目の前の長男を見ているだけで、わかりました。
そして長男は、理事長先生のおっしゃったとおりになりました。


「大丈夫。みんな、びっくりするくらい、成長しますよ。」


S園で生活して、4年。
本当に、本当に、成長したんだね、のんたん・・・。


長男を抱きしめました。
うれしくて、ありがたくて、涙が出そうでした。


(つづく)

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