MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは24歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。
ベトナム日記は、
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をご覧ください。
ベトナム家族旅行:
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小学生だったころの子どもたちの育児日記は、こちらです。
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のんたんの冬休み-95 おいしいものを食べる、ベトナム8日間おトク旅 - 「しずかに、だよ…。」(2017年12月30日/7日め)

2017年12月30日 サイゴン・オペラハウスで。(全盲難聴・のんたん 22歳)



ここで、あらためて、AO SHOWの説明文をご紹介いたします。
ネットから探してきたものです。

■ AO SHOWとは?

AO SHOWは、サーカス、アクロバット、演劇、ダンス、伝統楽器による生演奏を駆使し、エモーショナルかつコミカルに表現した「ヌーヴォー・シルク(新しいサーカス)」です。ベトナム南部(ホーチミン周辺)の美しい農村や都市で暮らす人々の生活文化を約70分に凝縮。ベトナムの日常生活に欠かせない竹や籠、米がさまざまな形で登場し、舞台を彩ります。『AO SHOW』の「AO」とは、ベトナム語で村(LANG)と街(PHO)という言葉の母音に由来しています。
視覚に訴える演出、素晴らしい振り付け、力強いアクロバットと伝統音楽(17種類からなるベトナム楽器を使用)が独特な舞台空間を演出します。『AO SHOW』は、2013年2月に、ホーチミン市民劇場(サイゴンオペラハウス)で初演。これまで、世界30ヵ国から約200万人を動員して好評を博し、2016年も引き続きホーチミン市民劇場での公演が決定しています。


■ ヌーヴォー・シルクとは?
もともと、シルク(サーカス)の本場であるフランス政府は、伝統的なサーカスの衰退に対応するため、1985年に国立のサーカス学校を設立しました。これにより、家族的に受け継がれてきたサーカスが、広く一般に門戸を開かれることになりました。そのなかで新しい感性や方法論が生まれ、伝統的なサーカスの枠を打ち破る、アーティスティックで創意工夫に溢れた作品、カンパニーが出現し始めました。その潮流を「ヌーヴォー・シルク(新しいサーカス)」と呼びます。世界的なカンパニーとなった「シルク・ド・ソレイユ」がカナダを本拠地としているように、いまやフランスだけでなく、ロシアやオーストラリアなど世界各国で、ヌーヴォー・シルクの潮流が生まれています。


資料では、AO SHOWは、
「世界最新鋭のヌーヴォー・シルク」と謳われています。
日本に帰って、この資料を見てからわかったことでしたが、
AO SHOWというのは、サーカスと銘打ってはいるものの、
どうやら、「娯楽」というよりは、もっと「芸術性」の高いものでした。



とにもかくにも、パーフォーマンスが始まってしまいました。
つくづく、こんなところへ来たのが失敗だった、と思いながら、
隣りに座っている長男を見ると、
さきほどと同じように、自分の口を指で押さえたままです。


その表情ときたら、真剣そのもの。
「だいじょうぶ? 息、してる?」
と聞きたくなるほどでした。(笑)


こんな状態で、いったい何分もつのだろう、と、
はらはらしながら見守りました。
もしも長男が飽きてきて、おしゃべりしそうになったら、
すぐに、私が長男の口をおさえる心づもりだったのです。


ところが。


10分たっても、20分たっても、長男はそのままです。
自分の口を押さえたままで、じっとしているのでした。
そんな長男を見たのは初めてのことで、めんくらっているうちに、
とうとう、ショーはフィナーレとなり、終わってしまいました。


結局。
AO SHOW のパーフォーマンスが続く70分もの間、
長男は、一言も発することなく、自分の口をずっと押さえ続けていたのです。


「静かにね…。」
左手で自分の口を押さえ、右手で、私の手をしっかりと握っている長男。
長男なりに、緊張していたのかもしれません。


「のんたん、ショーが終わったよ!
 すごいねえ。のんたん、おしゃべりしないで、
 ずっと静かにしていられたんだね。
 おかあさん、びっくりしたよ。
 すごいねえ、のんたん!」


そう。このとき私は、本当にびっくりしていました。
小さい頃から、たくさんのコンサートや舞台に、子ども達を連れて行きました。
けれど、難聴の長男には、
「静かにしていなければならない。」
という理由が、理解できませんでした。
(もっとも、連れて行く場所は、子どもを対象にしているようなことが多く、
 「なにがなんでも静かに」というようなものは少なかったのですが。)


だから、パーフォーマンスのあいだはいつも、他の方の迷惑にならないよう、
私が隣りに座って、長男の口を押さえていました。
それでも、ちょっと油断すると、
長男がなにかをしゃべってしまう、というのも、よくあることでした。


ところが、この日は違いました。
長男は、「しずかにしてね」という、私の言葉を理解し、
70分ものあいだ、気持ちを集中させ、
ずっと、静かにしていることができたのです。
こんな長男を見るのは、初めてでした。


「すごいねえ、のんたん! ほんとにえらいねえ!」
と、私にほめられて、得意そうな長男。
そんな長男を見ながら、私は、4年前のことを思い出していました。


(つづく)

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