のんたんの冬休み-41 おいしいものを食べる、ベトナム8日間おトク旅 - 怒りのブン・ボー・フエ(2017年12月27日/4日め)
2017年12月27日 ブン・ボー・フエを食べました。(全盲難聴・のんたん 22歳)
12月27日
空港まで迎えに来てくれたチュンさんが、
フエ市内の地図をくれました。
さらに、その地図に、
「ブン・ボー・フエのおいしいお店は、ここです。」
と、印をつけてくれました。
そこで、まずはここで、お昼ごはんを食べよう、ということになりました。
雨が降るフエの街を、迷いながら歩きましたが、
どうにか、見つけることができました。
「ブン・ボー・フエ」という名前のお店です。
中は、こんな感じです。
ブンボーフエとは、米粉のスープ麺に牛肉がはいっている料理です。
「ブン」はビーフン、「ボー」は牛を意味し、
「フエ風の牛肉汁ビーフン」という意味です。
まあ、「フエの牛肉うどん」ですね。^^
スープのだしは、レモングラス、フエ産の塩辛、豚足、牛肉などから取り、
ベトナム風の蒲鉾や牛の腿肉などの具がはいっています。
このお店では、野菜を盛った皿と共に供されましたが、
はじめから、麺に野菜が盛ってあるお店もあるそうです。
「酸っぱくてピリッと辛いのが特徴」だそうですが、
私たちが食べたものは、それほど辛くなく、
おいしく食べられました。
おいしかったんですが・・・。
米の麺は、つるつると箸からすべりおちてしまい、食べにくいんです。
私たちなら、どうということもないのですが、
長男には、この麺を食べるのは、かなりたいへんでした。
長男は、「麺をすする」ということを、知りません。
私たちが、「ずずっ」と音をたてて、麺をすする行為。
「あれは、赤ちゃんのときから、大人たちがやるのを見て、聞いて、
自然に覚えていくことなのだ。」
と、長男を育ててみて、初めて知りました。
他の人がやっているのを見ることができず、
「麺をどうやって食べるのか。」
ということを、ことばで説明したくても、
長男には伝わりません。
ですから、長男は、麺をすすることがなく、
ふつうのごはんのように、一口分ずつ口に入れようとします。
長い麺の切れ目になるまで、少しずつ箸で手繰り寄せ、
もぐもぐと、口に運び続けるのが、長男の食べ方です。
すごーーーーく時間がかかるので、
私が手伝うことが多いです。
この日は、ブンボーフエを4つ注文しました。
ひとりにひとつずつ、ですね。
そして、いつものように、私は、長男に食べさせながら、
その合間に自分の分を食べていました。
長男は、麺をすすることができないので、
麺を食べるときはたいてい、スプーンを使って手伝います。
まずは、麺を数本取って、スプーンの上に丸めて載せ、
さらにスープをすくって、
そのスプーンごと、長男の口に入れます。
こんなふうにして、
スプーンに一口分ずつをよそって、食べる、というのが、
いつもの食べさせ方です。
でも、前述のように、ブンボーフエは、米粉でできています。
米の麺は、表面がツルツルしているので、
数本だけ取ろうとしても、
するんっと、箸から滑り落ちてしまうのです。
「わっ 今日の麺は、ひときわ食べさせにくいわ~。」
と、わざと、言ってみました。
夫に手伝ってほしかったからです。
でも、夫は、まったく意に介していません。
自分のブンボーフエをすごい勢いで食べ終わったあと、
フエの地図なんか見ています。
頭の中は、この後の「楽しいフエ観光」でいっぱいなので、
私と長男のごはんなど、気にする余裕がありません。
私は、まだ、3口しか食べていないのに。
さっさと食べ終わり、手伝わない夫と、長男に介助しながら、食べ続ける私。
家族4人で食べるときは、いつもこんな感じです。
いつもこうなのです。
家族で食事すると、長男の食事の介助は、いつも私。
食べるのが早い夫は、さっさと食べてしまったら、
あとはしらんふりで、遊び始めます。
「おれはもう食べ終わったから、あとはオレが代わるよ。」
と、自分から言ってきたことは、過去22年、一度もありません。
5月に、家族で熱海に行ったときも、
私がひとりで長男に食べさせることになりました。
大量のお料理を前に、苦労して長男に食べさせているうちに、
お味噌汁をひっくり返してしまったことは、以前、書きました。
あのときの教訓が、ちっとも生きていない。
この人は、永久に変わらない。
ふつふつと、怒りがわいてきました。
いったいいつまで、この自分勝手な態度に、
我慢しなければならないのだろうか・・・。
(たぶん、一生。)
「いいかげんにしなさいよ!
私が、自分の分をほとんど食べられないで、
のんたんにずっと食べさせてるのが、あなたにはどうしてわからないの?
『オレは食べ終わったから、代わるよ。』と、どうして、言えないの?」
私の前には、ほとんど手をつけることがないまま、冷めつつある、
ブンボーフエの丼がありました。
それを見ながら、私は夫に、爆発していました。
見かねた長女が、
「おかあさん、私が代わるから…。」
と言いました。
いや、代わって欲しいわけじゃないんです。
私になんの気遣いもない夫が、むかつくだけなんです。
そのときです。
「おかあさん…?
ごめんね。ごめんね。」
長男が、びっくりしたようすで、つぶやきました。
私が長男を怒ることはめったにないので、
私の剣幕に、驚いたのでしょう。
そのうえ、長男は、「自分が怒られている」と思ったようです。(苦笑)
長男、あわてて、どんぶりを抱え、
せっせと食べ始めました。
そのようすが、なんだかかわいくて、
いっぱい、写真を撮ってしまいました。
僕、自分で食べるよ!
食べるからね。
よいしょ、よいしょ。
おいしいね!
「のんたん。だいじょうぶだよ。
のんたんがしかられたわけじゃないんだよ。
のんたんは、悪くないよ。」
と、長男に説明する、私。
おいしかったけれど、
すごく腹がたった、
ブンホーフエの思い出でした。^^
(つづく)