MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは24歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。
ベトナム日記は、
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をご覧ください。
ベトナム家族旅行:
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小学生だったころの子どもたちの育児日記は、こちらです。
http://limings.sweet.coocan.jp/

全盲難聴・のんたん 5回目の、東京都障害者スポーツ大会⑤ - 50m走(2018年6月2日)

2018年6月2日 銀メダルだよ!(全盲難聴・のんたん 22歳)



1時半になり、S園の先生が、
「そろそろ、移動します。」
と言って、長男を迎えに来ました。


あわてて、私と長女も、移動します。
長男が出場するもうひとつの競技は、50m走で、
目の前のトラックの、正反対の側で行われます。
長女とふたりで、スタジアムを半周しました。
観客席をひたすら歩き、トラックの反対側に着きました。


50m走の会場では、すでに、数十人の係員さんが、
競技スペースの両側に等間隔で並んで、スタンバイしていました。


どうしてこんなにたくさんの方が並んでいるかと言うと・・・。
走る方が全員、視覚障害者だからです。
まっすぐに走ることができない方も多く、
伴走者がいない選手の場合、走っているあいだに、
選手がエリアの外に出てしまうこともあります。


そういう場合は、係員さんが、
「方向が違いますよ。」
とおしえてくれます。
きめ細かく、走る方のフォローをしていく必要があるので、
こんなふうに、たくさんの方が必要になっているというわけです。


両側に並ぶ、係員の方々。たくさんの方に見守られて、選手のひとりひとりが走ります。


まるで、韓国ドラマで出てくる、財閥の会長みたいですね。^^
会長が車から降りると、
会社の前で、道の両側に社員が並んでお出迎えする、
という、アレです。
あのシーンを見るたびに、
「みんなヒマなんだなあ。
 あの時間に、仕事すればいいのに。」
と、あきれてしまいます。
(たぶん、ドラマだからやっているのであって、
 実社会では、あんなことはしないのだろうと思っていますが。笑)


とはいえ、韓国ドラマの財閥シーンとはおおちがいで、
視覚障害者の競技では、
これだけの人数の方が並んでくださるというのは、
必要なことなのです。
 こんなにたくさんの方が集まって、
 競技を支えてくださるのだなあ、
 ありがたいなあ、
と、いつも思います。


長女は、初めて大会にやってきたので、
なにを見るのも初めて。
新鮮だったようです。


そんな長女に、あれこれと説明しているうちに、
出場選手の一団がやってきました。
が、暑いので、全員、テントの中に入ってしまいました。
長男もいるはずなのですが・・・。


体を乗り出して、テントの中を覗き込むと、
あっ いました!
いとしの長男です。^^



のんたーーーん!と、呼びかけたら、
先生が、テントの外に連れ出して、
ポーズをつけてくださいました。


はい・・・。
なにもなくても、
うるさい、母でした。笑



いよいよ、競技が始まります。
視覚障害者の50m走は、ひとりずつ、走ります。
長男は、2番目でした。


先生といっしょに、テントの端でスタンバイ。

トップランナーのお友達といっしょに、出てきました。毎回、S園の先生が、伴走してくださいます。

お友達が走り始めました。長男は、先生といっしょに、ウォーミングアップ。
見ているこちらの方が、ドキドキします。^^

「位置について。」

「よ~い」

「ドン!」

行け~。がんばれ~。のんったーーーん!

ゴーーーーール!

先生といっしょに、こちらに戻っているところです。無事に走り終えて、ほっとしました。^^

「おかあさんだよ!」


今年は、長女がいっしょになって撮ってくれたので、
走っている写真がいっぱい撮れました。^^
あみちゃん、ありがとうね。


(つづく)

全盲難聴・のんたん 5回目の、東京都障害者スポーツ大会④ - お弁当の時間です(2018年6月2日)

2018年6月2日 障害者スポーツ大会で。(全盲難聴・のんたん 21歳)



「ソフトボール投げ」が無事に終わり、全員で移動しました。
本当は、S園の先生が、移動の介助をやってくださるのですが、
久しぶりに会えた長男です。^^
いっしょ歩きたいので、
「私が連れて行きま~す。」
と言って、先生から長男を引き継ぎました。


手をつないで歩きます。

駒沢オリンピック競技場。ふたつめの種目は、ここで行います。


この大会に参加するために、S園からは、たくさんの園生が、
バス2台に分乗して、大挙してやってきました。
そのため、スタジアムでは、
S園が待機するためのエリアを確保していただいています。
その一角に、家族3人で座りました。



S園の先生が、お弁当を配ってくださいました。
 おにぎり(たらことこんぶ)
 ポテトサラダ
 きんぴらごぼう
 鶏のからあげ
 焼きソバ
 煮物(大根、ちくわ、こんにゃく、人参)
 ミニトマト
 デザート(バナナ)


うーん。
はっきり言って、
私たちが買ってきた、マクドナルドのハンバーガーよりも、
ずっとおいしそうです。(苦笑)



長男のお弁当と、私たちが買ってきたバーガー、ポテトを、
全部いっしょに広げて、
3人で分け合って食べました。


全部、残さずきれいに食べました。^^

「のんたん、これなに?」「バナナ!」
こんな会話だけでも、うれしい母です。(←親ばか)


食事のあとで、
他の園生のおかあさんと、少しだけ、おしゃべりしました。
「娘です。ノゾミと、双子で生まれたんです。」
と、長女を紹介すると、
「あら~ すてきねえ。
 お姉ちゃん、えらいねえ。
 あちらにも、えらいお兄ちゃんがいるんですよ。」
と。


見るとすぐそこで、ひとりの男子園生と若い男性が、
いっしょにお弁当を食べていました。
なんでも、ご両親が高齢で、応援に来られなくなったので、
代わりに、お兄さんが駆けつけてこられたのだそうです。


そっかあ。
私も夫も、いずれ出歩けなくなったら、
そのときは、ムスメが、ってこともあるのかな、
などと思いながら、長女を見たら、
・・・寝ています。(爆笑)



お腹がいっぱいになったし、
次の競技まで、まだ少し時間があるし、
風が吹いていて気持ちがいいし。
私も、ちょっとお昼寝でもしたいなあ、
と思っていたところでした。


なので、ムスメが、
「ちょっと寝てもいい?」
と言ったとき、
「いいよ。」
と、たしかに私も言いました。はい。


でも、次の瞬間、寝ているとは・・・。笑
さすがです。


どこでもすぐに寝られるのが、うちの子供たちの特技。
結局、長女はこのままの姿勢で、
私に起こされるまで、ずっと寝続けておりました。www


目の前のトラックでは、車イス競技をやっていて、
スタートのピストルの音とかも鳴り響いているし。
けっこう、うるさかったんですが・・・。


全然、起きません。
たいしたものです。^^


(つづく)

全盲難聴・のんたん 5回目の、東京都障害者スポーツ大会③ - ボール投げなら、ドン、ドコ、ドーン!(2018年6月2日)

2018年6月2日 障害者スポーツ大会で。ボールを投げる前に、立つ位置と投げる方向をおしえてもらいます。(全盲難聴・のんたん 21歳)



長男、投球位置についたのですが、
ボールを持った姿勢で、かたまったままです。
なにが起こったのだろう?
と、みんなが見守っています。
でも私は、すぐに気がつきました。^^


係の方からボールを持たされて、
「どうぞ」
と言われたのですが、
それが、長男には伝わらなかったようなのです。


長男はこれまで、「どうぞ」と言われてなにかをやる、
ということが、あまりなかったように思います。
ここでも、「どうぞ、ボールを投げてください。」
と、具体的に言っていただければよかったのですが、
初対面の係員さんには、それがわかりません。


長男は、状況が理解できず、
ボールを持ったままの姿勢で、かたまってしまいました。
「どうぞ」とだけ言われても、なにをすればいいのか、
長男には伝わらなかったのです。
係員さんも、困ったようすです。


ボールを投げるときには、3つのステップを踏みます。
 ①前にある、左足に重心をかける。
 ②後ろにある、右足に重心をうつす。
 ③その反動で、再び左足に重心を移し、ボールを前に向かって投げる。
です。
私たちはこれを、ごくあたりまえに、やってしまいます。


ですが長男は、生まれてから一度も、
「だれかがボールを投げるようす」を、
見たことがありません。
自分の手から離れたボールがどうなるかも、
見たことがありません。
なので、長男は、「物を投げる」ということを、知りません。


そんな長男が、スポーツ大会の、
それも、「ソフトボール投げ」に出場したわけです。
つまり、実はこれ、
長男にとっては、かなり難易度の高いことでした。^^


もちろん、競技に出場するにあたって、
S園の先生は、長男といっしょに、
ボールを投げる練習をしてくださいました。


その練習のとき、先生は長男の手をとり、足をとり、
「ドン、ドコ、ドーンのリズムでやろうね。」
と、おしえてくださったと、何年か前に聞いたことがありました。


そう。
長男の好きな、たいこの音です。
「ドン、ドコ、ドーン」のリズムに合わせて、
3つのステップを練習したわけです。
そのおかげで、長男は、これまでの4回のスポーツ大会でも、
無事にボールを投げることができたのです。


目の見えない長男が、ボールを投げる・・・。
そのようすを見るだけで、
私も夫も、毎年、感動していました。


そうだ。あれだ。
と、私は気がつきました。


どうなることか、と、みんなが黙って見守る中、
私は、大声で叫びました。
長男に聞こえるように。


のんたーん、ドン、ドコ、ドーン、だよ~。
ドン、ドコ、ドーン!!
ドン、ドコ、ドーン!!


私の声が、長男に届いたようです。
そのとたん、長男は、状況を理解しました。
すっと体を動かし、
前に向かって、ボールを投げてくれました。


やった~!!
のんたん、じょうっず~!!


うるさい、母です。(爆笑)


ドン、ドコ、ドーン、のリズムで。まずは、「ドン」。

「ドコ」

「ドーン」で投げました。係のみなさんもほっとされたようで、拍手が起こりました。^^

2回目も行くよ! 「ドン、ドコ、ドーン!」

白い旗が上がりました。成功です! 

3回目も、無事に終了。


こうして長男は、練習1回、本番2回の、合計3回の投球を、
今年も無事に終えることができました。
ほっとしました。


「ボールの投げ方」を、長男にもわかるように、と。
「ドン、ドコ、ドーン」で教えてくださった、
S園の先生に、感謝です。^^
まさか、私がそれを、大声で叫ぶことになるとは、
思ってもいませんでしたが。(爆)
(ちょっとはずかしかったですが、長男のためには、
 はずかしいなんて、言ってられないわけです。)


いや~ 見に来てよかったです。
もしも私が「ドン、ドコ、ドーン」と大声をあげなかったら、
長男は、最後まで状況を理解できず、
そのまま、「棄権」となってしまっていたかもしれません。


一時はどうなることか、と思いましたが・・・。
ボールを3回投げるだけでも、
楽しませてくれる、長男なのでした。^^


ソフトボール投げは、無事終了。後ろは、メダルをもらっているみなさんです。
長男には、母が、「よくできました賞」をあげます。^^

「のんたん、上手だったね!すごいねえ!」とほめられて、うれしそうな長男。^^

「ドン、ドコ、ドーン、だったね! よく思い出したね!」と言うと、その声に合わせて、ボールを投げるしぐさを、やってみせてくれました。「ドン、ドコ、ドーン!」


やれやれ、ひとつめの種目「ソフトボール投げ」が終わりました。
次は、お弁当の時間です。
そして、休憩のあと、
いよいよ、ふたつめの種目に挑戦します。^^


(つづく)

全盲難聴・のんたん 5回目の、東京都障害者スポーツ大会② - だーれだ?^^(2018年6月2日)

2018年6月2日 障害者スポーツ大会で。(全盲難聴・のんたん 22歳)


6月2日


スポーツ大会当日の朝です。
前夜、職場の仲間といつもの女子会で飲みまくり、
終電でかろうじて帰宅した私(苦笑)。


眠い!
でも、がんばる。^^


長男が出場する「ソフトボール投げ」は、
11時半ごろから始まる、と聞いていました。
その時間までには、会場に行かなければなりません。


少し余裕をもって、9時過ぎに、長女といっしょに家を出発しました。
電車で、東京都区内をほぼ横断するように移動して、
「駒沢大学」駅で下車。
駅前のマクドナルドでお昼ごはんを買って、
会場となっている、駒沢オリンピック公園まで歩きました。


この公園、かつてオリンピック会場だっただけあって、
広大な敷地に、公園や競技場がいくつもあります。
長女は、広さにびっくりしていました。


私は、毎年来ているので、
いまさら地図なんて見なくても、
「ソフトボール投げ」の会場となっている競技場まで、
すたすたと歩けます。


ソフトボール投げの会場に行ってみると、いました!
テントの中に、我が息子!^^


長女が、そおっと近づいていって、長男の手を触り、
「だーれだ」
と言うと、間髪を入れず、
「あみちゃん!!」(笑)


この日に長女が来ることを、伝えていなかったのですが、
長男はすぐに、「あみちゃんだ!」とわかっていました。
さすがです。^^



長男、手を握っただけで、
その人が誰であるかをあてることが、よくあるんです。


もう何年も前のことになりますが・・・。
小学生の頃から10年以上、毎週来てくださっていた、
ホリイさんというボランティアさんがいらっしゃいました。
その方と長男が、2年ぶりくらいに、
たまたま、ある集まりでごいっしょしました。


ホリイさんは、長男に挨拶しようとしたのですが、
私は、わざと、目で合図してそれをとめ、
長男の手だけを握ってもらいました。


「だーれだ」
と私が聞くと、長男は、まったくまようことなく、すんなり、
「ホリイさん」
と言ったので、一同、びっくり。


何年も会っていなかったし、
その日に会うことだって知らなかったのに、
手をさわっただけで、
長男は瞬時に、ホリイさんだとわかったのです。


いちばんびっくりしたのは、ホリイさんだったことでしょう。
ホリイさんには、長男が小学一年生の頃から、
毎週、お世話になりました。
放課後、学校のお迎えにいらしてくださって、
小さな長男と手をつないで、公園に行ったり、児童館に行ったり。
数時間をいっしょに過ごしたあと、学童保育に送ってくださいました。


「放課後デイサービス」なんてありがたいものがなかった、
15年以上前の話です。
そのころの、ホリイさんの暖かい手を、
長男は何年たっても、覚えていたのです。
そのようすを見ていた私は、涙が出そうになりました。


そんな長男ですから、
自分の妹の手をさわってあてるくらいは、
朝飯前、なのかもしれません。^^


ちなみに、私のことはどうかというと、
長男は、手を触ることすら、必要としません。
長男の鼻先に、私の手の甲を近づけるだけで、OK。(笑)
長男、「フン」と軽く一回、息を吸っただけで、
「おかあさん!」と言います。(爆笑)
すごい嗅覚です。^^


さて、競技場のテントの中で、
長男といっしょに、私と長女も待機していたのですが、
名前を呼ばれた人たちが、
隣りのテントに移動することになりました。


まだ11時15分です。
競技は、予定していた11時半よりも、
少し早めに進行しているようです。
例年どおりの時間に会場に到着していたら、
長男の競技に間に合わなかったかもしれません。
時間に余裕をもたせておいてよかった、と思いました。


「ソフトボール投げ」は、出場者の全員が、視覚障害者です。
なので、移動するときは、一列に並び、前の人の肩に手を置いて、
「汽車ぽっぽ」のようになって、みんなで歩きます。
(ちょっとほほえましいです。^^)


みんなで一列に並んで、肩に手を置いて移動します。


隣りのテントまで移動したら、
イスに座って、自分の順番を待ちます。


下の写真では、みんなうつむいて座っていますが、
これは、視覚に障害がある方の普通の座り方です。
目の見えない人は、「前を向いている」必要がありません。
前を向いても、見えるものがないからです。
なので、自然と、こんな座り方になります。


みなさん、下を向いておられますが、別に、しょんぼりとしておられるわけではありません。みんなで歌を歌ったりして、陽気に待っておられました。^^

いたいた。奥から2番目に、長男が座っています。^^


長男の出番は、2番目でした。
公平を期すためでしょうか。
今年から、全員、アイマスクをつけることになったようです。


まずは、位置について、
審判の方から、投げる方向をおしえていただきます。


「足の位置はここですよ。」


いよいよ、本番です。
ところが、ここでちょっと困ったことになりました。
「開始」の合図があったのに、
長男が、ボールを投げようとしないのです。


会場のみんなが見守る中、
長男はボールをもったままで、じっとしています。
どうしたのでしょうか。
係員の方も、戸惑っているようでした。


(つづく)

全盲難聴・のんたん 5回目の、東京都障害者スポーツ大会① - 母娘で行くよ!(2018年6月2日)

2018年6月2日 障害者スポーツ大会で。(のんたんとあみちゃん 22歳)


6月1日


長男が生活しているS園では、
「園生の体力作り」をとても大切にしています。
週の時間割の中には、体育の時間があるし、
運動会も開催されます。
中でも、大きなイベントとして実施しているのが、
東京都障害者スポーツ大会への参加です。


10年以上前のことになるだろうと思いますが、
この大会に、園として初めて参加した頃は、
「走る姿勢がおかしい」などと、観客から
笑われることもあったそうです。
目が見えなくて、そのために、
一度もきちんと走ったことがない、という方も
多かったのだと思います。


でも、そんなことは気にせず、
園生みんなで、できるかぎりの参加を続けました。
何年も何年も、練習を続けながら。


今では、S園からの参加者だけで、
毎年、数十個のメダルを持ち帰るまでになっています。


長男は、S園に入所した年から、大会に参加させていただきました。
5年目の今年は、5回目の参加、ということになります。
大会の当日は、もちろん、私たち両親も応援に駆けつけます。


初めて参加した年は、いきなりの銀メダル。^^
以来、これまでの4回で、銀メダルを3個、銅メダルを1個いただきました。


2017年の障害者スポーツ大会の日記は、こちらです。


今年はどうなるかな・・・?と、楽しみにしていたら、
一ヶ月前になって、いきなり夫が、
「オレ、今年は山に行くから、
 スポーツ大会には行かない。」
と言いだしました。(怒)


夫は、数年前から、
「視覚障害者といっしょに山に登る会」
というボランティア活動に参加しています。
今年の行き先は会津駒ヶ岳だそうですが、
その下見のため、2泊3日ででかけるというのです。
今回は初めて、自分がその「下見チーム(5名)」の一員になったとか。
何ヶ月も前から決まっていたことなので、抜けられない、
と言うのです。


事情はわかります。
世のため、人のため、というのもわかります。
我が家も、のべ何千人ものボランティアさんにお世話になってきたのですから、
それを誰かに返したい、という気持ちも当然です。


けど・・・。


「下見チームはほかに何人もいるけど、
 のんたんの父親はあなたひとりでしょう。」
と言ってみました。
でも、結局夫は、「山に行く。」と。


いいんですよ。
人の役にたつことだから。
でもね。


「申し訳ないけど、山の方に、行ってもいいかな。」


と、言って欲しかったんです。
けれど夫は、
「前から決まってたことだから。」
としか、言いません。


どっちが先か、でなくて、
どっちが大切か、なんですけどね・・・。


いつもなんですよ。
ひとりでスペインに2週間行ったときだって、
過去3回ともそうだったし、
今回だってそうです。


彼のことばに、
「行ってもいいかな?」
は、ない。
「行くから。」
なんです。


結局、「自分がやりたい方を選ぶ」ってことだよね・・・。
ふつふつと沸いてくる、夫への失望感。(いまさら、ですが。)


その夫婦間の険悪な会話を、横で聞いていた長女。
「お、おかあさん。私が行くから。
 私が、いっしょに行くから。」(苦笑)


夫婦げんかは犬も食わない、などと言いますが、
それは、仲がいい夫婦の話。
すっかり冷え切った私たち夫婦のけんかは、
ムスメが食べてくれないと、どうにもならないようです。(苦笑)


そんなわけで、毎年、夫婦で応援に駆けつけていた、この大会。
今年は、私と長女のふたりで行くことになりました。


スポーツ大会前日の夜、夫は、そそくさと山へ出発。
「ごめんね」の一言は、
とうとう一回もなかったのでした。(ばかやろ~!怒)


おかあさんの声に、にっこり。


(つづく)