MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは24歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。
ベトナム日記は、
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をご覧ください。
ベトナム家族旅行:
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小学生だったころの子どもたちの育児日記は、こちらです。
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盲学校の育児教室で話しました - 聴覚視覚障害児を育てるおかあさんへ ④

2006年11月3日 授業参観。この日は「生活」の時間で、ピザを作りました。始めに手を洗います。
(全盲難聴・のんたん 11歳)


自立に向けて大切にすべきこと(しつけ、身辺自立、学習)


(3) 学習


 これも、身辺自立と同じで、私たちは、あまり教育熱心な親ではなかったと思います。
 長男は、0歳のときから18歳まで、国立T研究所というところの、「盲ろう児」の教育相談で、お世話になりました。ふたりの先生が、18年間ずっと、長男に関わってくださり、保育園や学校、学童など、長男がどこへ進もうと、必ずそこを定期的に訪問し、見守り、助言してくださっていたのは、とても恵まれていたと思います。
 盲ろう教育をきちんと研究しておられる方は、日本ではたいへん少ないのですが、その中心的な存在であるおふたりの先生から、18年にわたって指導していただけたわけですから、たいへんありがたいことでした。
 そのなかで、忘れられない話があります。
 長男がまだ赤ちゃんの頃、「今から、なにかやっておいた方がいいと思うことがあれば、おしえてください。」とお尋ねしたことがありました。そのときに、その、研究所の先生に言われました。
「私は、障害のあるお子さんにたくさんお会いしてきましたが、ひとつ、残念に思うことがあります。成人してから聞いてみると、ほとんどの方がこう言われるのです。『私は、小さい頃から、訓練、訓練、でした。ですから、子どもの頃に、おもいっきり遊んだ記憶がありません。』と。おかあさん、どうぞ、のぞみさんと、いっぱい遊んであげてください。勉強は、あとからでいいのです。」
 そのことばが、私たち夫婦の、その後の子育ての柱になったと思います。
 先生から言われたことを拡大解釈した私たちは、子どもの勉強はそっちのけで、いつも、あちこちへと、家族でおでかけばかりしていたように思います。
 おかげで、点字を覚えるのも、点字タイプを打つのも、クラスのお友達よりもずっと遅かったのですが、なにより、「毎日が楽しい」と思いながら子どもを育てることができたのは、私たち家族にとって、そして長男にとって、とても幸せなことであったと思います。
 勉強も、もちろんたいせつですが、「いつまでに、これをできるようにしなければ」と考えながら、あまり悩まなくても良いのではないか、と思います。
 長男が定期的に通っていたその研究所で、心に残ったできごとがありました。
 同じ盲ろうの、Yくんという男の子がいました。彼は、18歳で盲学校を卒業したときには、点字をマスターするまでにはいたりませんでした。研究所の教育相談も、18歳で終わるはずだったそうです。でも、そのとき、研究所のふたりの先生が、Yくんのおかあさんに、「よろしかったら、これからも研究所にかよって、点字を勉強しませんか」と提案しました。
 こうしてYくんは、高等部を卒業後も、週2回、研究所に通い続けました。そして、研究所の先生が、地道なはたらきかけを積み重ね、何年もかかって、20歳も過ぎてから、Yくんは点字が読めるようになりました。
 このことから私は、「学校に通っているあいだだけが、勉強じゃない。勉強は、一生続けることができるのだ。」ということを教えられました。
 今、長男は、「S園」という施設で生活しています。生活している部屋は、4人部屋です。毎日、午前中は、陶芸や木工などの創作活動を行い、午後は、生活訓練をしています。学校のようなところなので、体育の時間やクラブ活動もあります。まあ、寄宿学校のようなところですね。
 そういう生活を通して、洗濯や掃除など、身の回りのことがひととおり自分でできるようになったら、同じ施設内の個室に移って、生活できるようになります。
 つまり、長男は、学校は卒業しましたけど、今でも毎日、さまざまなお勉強をして、訓練を受けながら、生活しています。最近は、S園で、手話も習い始めたようで、たまに帰宅すると、日付や曜日を手話で見せてくれたりするので、びっくりしてしまいます。以前にはできなかったこと、知らなかったことが、いつのまにかできるようになっているのを目のあたりにするわけで、ほんとうに、生きている限り、勉強なんだなあ、と思います。
 ただ、子どものころも、今でも、親としていちばん大事に思っていることは、「毎日が楽しい」と、長男自身が思える、ということです。勉強を続け、それを楽しいと思えること。それが大切なんじゃないかな、と思います。今、S園で、いきいきと生活している長男を見て、この進路を選んで本当に良かった、と、毎日感謝しています。


 以上で、先生からいただいた、三つのテーマ「自立に向けて大切にすべきこと(しつけ、身辺自立、学習)」についてのお話を終わります。
 最後に、将来に向けて、というお話をしたいと思います。


(つづく)

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