盲学校の育児教室で話しました - 聴覚視覚障害児を育てるおかあさんへ ③
2006年11月3日 盲学校の教室で。5人のクラス。机が5つだけの、小さな教室です。奥にいるのが、長男と担任のH先生。(全盲難聴・のんたん 11歳)
自立に向けて大切にすべきこと(しつけ、身辺自立、学習)
(2) 身辺自立
長男は全盲だったので、着替え、食事、など、人がするのを見て、自然に覚える、ということができません。おとなしくいすに座らせておく、ということもさせたことがなかったので、小学校に入ってやっていけるのか、と心配でした。
ある、有名な発達クリニックに連れて行くと、「きちんと座っていられない子どもは、学校にはいってもやっていけない。まずは、それをしつけないといけない。」と言われました。
でも、実際に入学してみると、先生方に恵まれ、とてもよい環境で、学校生活をおくることができました。
そして、入学してから、気がつきました。
たいせつなのは、「授業中は、おとなしく、いすに座っていること」なのではなく、「今、どうして、座っていなければならないのか」を、本人が理解し、「座りたい気持ちにさせる」ということだった、と。
小さい頃の長男は、知らない場所に来ると、まず、部屋の中を歩き回り、あちこちさわりました。そうして、ここはどういう場所か、をある程度把握したら、ようやく納得して、いすにおとなしく座るのです。
ですから、いきなりいすに座らせるのではなく、状況を理解してから、次の行動に入る、というプロセスに配慮することが、盲ろう児には必要なのだな、と思いました。
家庭では、夜、家に帰り、寝る前に、おふろもごはんも、と、限られた時間で忙しくしていたので、そのプロセスを尊重して子どもに関わっていくことは、難しい面もあったのですが、むしろ学校の先生方のほうが、それについては、よく理解してくださり、じっくりと時間をかけて、長男といっしょにとりくんでいただいたことが多かったと思います。
ですので、親はあまり熱心にやってなくてお恥ずかしいのですが、着替えや食事などの身辺自立は、学校で時間をかけて、きちんと教えていただいたな、と思っています。家庭はむしろ、学校でおしえていただいたことを復習する場になっていたような気がします。そういう学校生活のなかで、親も、子どもといっしょになって学ばせていただいたと思います。
あまりいい親ではなかったかもしれませんが、目が見えない子どもの育児書というのは、そう多くないですから、あれもこれもと先走っておしえたいと思っても、できることには限りがあります。それよりも、家では、子どもといっしょに楽しく遊ぶことをいちばん大切にする、というのが、我が家のスタイルだったように思います。
(つづく)