ガンになるまでの日々 ⑦ 要再検査(2008年12月)
2008年10月4日 ひたち海浜公園の観覧車で。(全盲難聴・のんたん 13歳/中1)
2008年12月
たとえば、病気になり、
相部屋に入院した場合、
同室の方から、あいさつ代わりに、
「なんの病気ですか?」
と訊かれることは、珍しくありません。
そんなとき、
「ガンなんです。」
と答えると、
自分は平気であっても、
相手の方が気を使ったり、
同情したりして、
気まずくなったりするかもしれません。
けれど、G研は、ガンの専門病院。
686床もの大病院に入院する患者は、
ほぼ全員が、ガンです。
なので、あいさつ代わりのことばは、
「なんの病気ですか?」
ではなく、
「どこのガンですか?」
となります。^^
私も、あなたも、
ここにいる人は、みんなガン。
そうはいっても、院内は、けっして、
暗い雰囲気ではありませんでした。
むしろ、「おたがいさま」の気持ちで、
誰もが気軽に、
自分のガンを語れる場所でした。
4人部屋で同室だったみなさんとは、
すぐになかよくなったし、
こちらから訊かなくても、
誰もが普通に、自分のガンを
語ってくれました。
それこそ、お茶でも飲みながら。
話がはずんだあげく、4人全員が、
ベッドのカーテンを全開して、
4人部屋がひとつの「広間」となったことも。^^
まさに、「女子会」です。笑
そんな最中に、うっかり、
部屋に入ってしまったM医師は、
一瞬、後ずさりし、笑
「うわっ なんだ、この雰囲気は。
みなさん、明るいですね~~笑」
と、いっしょに笑っておられました。
全員がパジャマですから、
毎日が、修学旅行で泊まった、
旅館のようでした。
そんな雰囲気だったので、
本当なら、親友にだって
言いにくいような話を、
みなさん、するすると話してくれました。
今日は、Bさんの話を。
70歳くらいで、下町の親切なおばさん、
といった感じの方でした。
Bさんは、婦人科検診を、
毎年きちんと受けていたのですが、
2007年の区の検診で、
『要再検査』と言われてしまいました。
その年の暮れ、
自宅の近所にある、公立の総合病院で、
検査を受けたそうです。
結果は、「問題なし」。
「お正月に、親戚みんなが集まってね。
『心配したけど、
なんでもなかったのよ~』
って、おせちを食べながら話したのよ。」
ところが、2008年の秋。
ふたたび、検診で、
「要再検査」と言われてしまいます。
「あらやだ。まただわ。」と、
軽い気持ちで、同じ病院に行ったところ、
今度は、「子宮がん」と診断されました。
「たぶんね。
一年前のときも、きっとガンだったのよ。
でも、前回は初期だったから、
多分、見落とされたんだよね。
一年前に、ガンだと言ってくれてれば、
もっと早く治療ができたのに。
おかげで、一年、ソンしちゃった。」
と苦笑い。
通常であれば、ガンと診断した病院で、
そのまま治療することが多いと思います。
でも、怒ったご主人が、
「もう、そんな病院には行くな。」
と言ったそうです。
いいなあ…。
うちなんて、病院の相談をしただけで、
夫は黙って部屋を出て行きましたから。爆
「それでね。
主人が病院を探して、
ここで治療することになったの。」
検診で「要検査」と言われたら、
総合病院で検査するのは、
あたりまえのことです。
「疑いあり」と
言われていたにもかかわらず、
ガンを見落とされることって、
あるのでしょうか。
にわかには信じがたい話でした。
けれど、それからずっと後になって、
驚くものを見てしまったのです。
それは、1階のホールに置いてある、
雑記帳でした。
患者や家族が、自由に書き込める、
ノートのようなものだったのですが、
何の気なしに読んでいた私は、
こんな記述を見つけました。
「ふたつの病院をまわり、
見つからなかったガンを、最後に、
この病院が見つけてくれました。
とても感謝しています。」
それを見て、ようやく、
「Bさんの言っていたことは、
本当だったのかもしれない。」
と思いました。
ほんとうはガンなのに、
検査をしても、
そのガンを見つけられる場合と、
見つけられない場合がある…。
そんなことは、
考えたこともありませんでした。
検査で大丈夫と言われたら、
ふつうは誰でも、安心すると思います。
でも、ほんの少し、5%くらいは、
心の中に、疑う気持ちを残しておく。
なにか自覚症状を感じているのであれば、
違う病院で、再度検査してみる。
そういうことも、ときには必要なのだと、
教えてくれた、Bさん。
さりげない、「下町のおかあさん」でした。
(つづく)
ひたち海浜公園の観覧車で。(2008年10月4日)