定年でもベトナム。ハノイで始める、お仕事日記 131 - 迷子事件(2019年10月19日/49日め)
2019年10月19日 カットカット村で。
10月19日
カットカット村から、すでに、
お話はランチへと移りましたが、
カットカット村での忘れられない事件について、
やはり書いておこうと思います。
とても広い、カットカット村。丘の上のポケモンセンター、お花畑、なんちゃって集落と、ガイドさんの案内で歩きました。
村の中の道は、観光客だらけで、すごい混雑ぶりです。中央に写っているのは、土産物のポシェットを売る、黒モン族の女性。
この人ごみの中を、ガイドさんを見失わないよう、
懸命について歩きました。
ところが。
集落地帯に着いて、
ふと見まわすと、長女がいません。
しばらく待っていたのですが、
長女が来る気配はありません。
長女、私たちとはぐれてしまったようです。
「私、探してきます。」
と言って、引き返そうとしたら、ガイドさんが、
「いえ。ここにいてください。
私が探してきます。
服の色は何色でしたか?」
と。
ガイドの女性は、私と夫をその場に残して、
すごい人ごみの中を、探しに戻ってくれました。
このときです。
ガイドさんが探しに行ってくれるとわかったとたん、
夫がきびすを返して、集落地帯の奥へと、
さっさと歩いていってしまったのです。
私なんかは、
「自分の娘が行方不明なのに、
観光を続ける気になれるのか?」
と思うのですが、
まあ、これが夫のいつものスタイルです。
夫の頭の中には、
「自分にとって都合の悪いことは、
絶対に起こらない。」
という信念というか、思い込みみたいなのが、
脳の芯まで沁みついています。
このときも、彼流に考えると、
「都合の悪いことは絶対に起こらない」のですから、
「ムスメは行方不明だが、
ガイドさんが探しに行ってくれたから、
もう大丈夫。」
ということになります。
なので、なんのためらいもなく、
散策にでかけてしまえるのです。
「とんでもなく都合のいい性格」と言わざるを得ませんが、
そうは言っても、現実には、
「都合の悪いことが絶対に起こらない人生」
なんてありえません。
長い人生には、
子どもに障害が残ったり、
妻がガンになったりとかもあるわけです。
そのたびに、夫はパニックを起こして、
脳が機能不全になります(怒)。
私はと言えば、
このときはまさか、長女が誘拐されたとか、
そんなことまでは考えていませんでした。
でも、
「外国で、みんなとはぐれて、
たったひとりになった長女が、
どんなに心細い思いをしていることだろう。」
と思うと、かわいそうでなりません。
その場で待っているあいだも、
いてもたってもいられない気持ちで、
人目もはばからず、大声で、
長女の名前を呼び続けました。
「私の声が長女に聞こえるように。
長女が、私の声に応えてくれるように。」
と願って。
長女の名前を何度も叫びながら、
20分くらい待っていたところ、
道の向こうから、
長女とガイドさんがやってくるのが見えました。
ガイドさんは、すごい人ごみの中で、
長女を見つけ、連れてきてくれたのです。
私たちが村を散策する間、屋台で休憩中のガイドさん。頼もしい方でした。
無事見つかって、ひと安心。
「どこに行ってたの?
道がわからなくなったの?」
と尋ねたところ、
「ん…、子ネコを見てた。」
と。爆
カットカット村で見つけた子ネコ。
そういえば、来る途中に子ネコがいました。
少しだけ立ち止まって、
「かわいいね。」
と、長女と話した記憶があります。
私は、そのまま、
ガイドさんの後を追って歩き始めたのですが、
長女はなんと、座り込んだままで、
子ネコを見ていた、と。笑
「で、顔を上げたら、もう誰もいなかった。」
はあ…。
母「それで、子ネコといっしょに、
ずっとそこにいたの?
あのさ、あわてて後を追いかけるとか、
私たちを探してみるとか、
なんとかしようと思わなかった?」
娘「だって、おかあさん、前に言ったじゃない。
迷子になったら、どこへも行かず、
じっとしてろ、って。」
あ~…。
なんか、そんなこと、昔言ったような気がします。
我が家は、子どもたちが中2になってから、
家族で海外に行くようになりました。
その当時、
「万が一、外国で旅行中に、
長女がどこかではぐれたりすることもあるかも」
と考え、言い聞かせたことがあります。
「もしも迷子になったら、
お母さんをさがしてウロウロしちゃだめ。
迷子になった場所で、とにかくじっとしてなさい。
お母さんが、必ず、見つけてあげるから。」
と…。
10年も前に言われたこと、
長女はずっと、覚えていたんですね…。笑
子ネコといっしょに、待っていた長女です。笑
ようやく長女が見つかって、
ほっとしていたら、
散策を終えた夫が戻ってきました。
その場に長女がいるのを見て、
「あっ いたいた!」
と、ニコニコ笑っています。
ほんとに、「自分に都合が悪いことは起こるはずない」と、
それしか頭の中にはないんだなあ…。
その表情を見ていたら、
無性に腹が立ってきたMIYOなのでした(苦笑)。
帰国後、カットカット村での写真を整理していたら、
見覚えのない家の写真が出てきました。
黒モン族の家のようですが、私は、こんな家を見た覚えはありません…。
黒モン族の生活が再現されています。
「カットカット村に、こんなのあったっけ?
私、見てないけど。」
と、夫に尋ねると、
「あ、それはね。集落のはずれにある家。
博物館みたいになっていて、
生活用品とかがいろいろ置いてあるの。」
と。
「あ~、そう。
つまり、自分の娘が行方不明になってるときに、
自分ひとりであちこち歩き回って、
そのときに、写真まで撮ったわけね?
この3枚が、そのときの写真なのね?」
妻の皮肉たっぷりのことばに、
夫はうなだれるしかないのでした。
「自分には、悪いことは絶対に起こらない」と信じている夫です。(怒)
カットカット村で売っていた、生薬です。
夫が撮った、貸衣装屋さんの写真です。
いろいろと、思い出深いことが多かった、
カットカット村。
長女の迷子事件もまた、
忘れられない思い出となりました(苦笑)。
次回はいよいよ、待望のホテルへと向かいます。
(つづく)

















