MIYO'S WEBSITE-全盲難聴のんたんの育児記録と卵巣ガンで思ったこと

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは21歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。

のんたんの冬休み-94 おいしいものを食べる、ベトナム8日間おトク旅 - 「しずかに!^^」(7日目)

2017年12月30日 サイゴン・オペラハウスで。(のんたんとあみちゃん 22歳)



係員がいなくなったあとで、私は夫に尋ねました。
「今の人、なんて言ってたの?」


夫によると、彼は、我が家の長男のことを気にしていたのだそうです。
「パーフォーマンスの最中に、大声を出して、
 他の方の迷惑になったりしませんか?」
みたいなことを、言っていたそうな。


へえ・・・、そうなんだ・・・。


今まで、長男を連れて、たくさんの舞台やコンサートに行きましたが、
主催者側から、
「他の人の迷惑にならないのか?」
などと聞かれたことは、一度もありません。
(逆に、主催者の好意で、
 障害者用のスーパーシートに移動させていただいたことはありますが。笑)


ここ、ベトナムでも、多くの方々から親切にされてきましたが、
こんな高級な場所に来ると、やっぱり、人の気持ちも違ってくるのかな・・・。(苦笑)
ちょっと残念なできごとでした。
(だから! こんなとこに来なきゃよかったのに!笑)


それに対して、夫は、
「No!」
と言ったわけですが、
もしもそう言わなかったら、どうなっていたのでしょうか。
「他の人の迷惑になるようなら、出て行ってください」
なんて、言われるところだったのでしょうか。


いや~、迷惑をかけると思ったら、はじめから来ませんよ。(苦笑)
と、ここまで考えたところで・・・


え、でも、ちょっと待って。


と、気がつきました。
たしかに、すごい迷惑をかけるようなことはありません。
でも、もしかしたら、「あ」とか、一瞬、声を出してしまうことはあるかも・・・。
ないとは言えません。


でも、それに対して、夫は、はっきりと、
「No!」
と答えてしまいました。
絶対にない、と、言いきったわけです。
あとのことなど考えず、言うだけ言うのが、うちの夫です。
責任など、とりません。(笑)


たかがサーカス。
みんなで歓声をあげたりしながら、楽しく見るもの。
…と、私は思っていました。
が、どうやらここは、そんな場所ではなかったようです。


なんといっても、めったにはいれない、サイゴン・オペラハウス。
ひとり5000円ものチケットは、日本人の私にとっても高額でしたが、
ベトナムの人にとっては、もっとずっと高価なものになることでしょう。
とすると、やってくる人の、気合いが違うかもしれません。
パーフォーマンスの最中に、万が一、長男が一言でも声を出したら、
やはりそれは、大金を払ってショーを見に来た人には、迷惑なことでしょう。


これはたいへんなことになった、と思いました。


夫は、「No!」と強気で言い放ったものの、
その重要性には気がついていないようで、
のんきに、場内の写真なんかを撮っています。
「だから、こんなとこに来なきゃよかったのに。」
と言いたいことばを、ぐっと我慢しました。


開演時間まで、あと数分です。
私は、意を決して、長男に話しかけました。


「のんたん、これから、ショーが始まるよ。
 とてもだいじなショーです。
 みんなで、静かにして、ショーを聞きます。
 のんたんも、おしゃべりしないでね。
 だまって、しずかに、ショーを見ましょう。」


長男は、私の話を、じっと聞いていました。
私の言うことを、長男が全部理解するだろうとは、
思っていませんでした。
でも、たとえ理解してくれなくても、とにかく言ってみるしかありません。
そう思って、いっしょうけんめい話しかけました。
そして・・・。


「わかった?」


長男に、最後にそう言いました。
すると、びっくりすることが起こりました。


「しずかに! しずかに、だよ。」


長男はそう言って、自分の口を、指でおさえたのです。



長男のそんなしぐさを、私はそれまでに見たことがありませんでした。
自分の口を、指でおさえるなんて…。(笑)


これなら、とりあえずは、話したり声をだしたりすることはないでしょう。
でも、AO SHOWは70分もあります。
そのあいだずっと、こうしていられるわけがありません。


長男が、このしぐさに飽きて、
ひとことでも声を発してしまったら、おしまいです。
その前に、未然に防がなければなりません。
そのためには、70分のパーフォーマンスの間中、ずっと、
私が長男の口をおさえているしかないなあ・・・。


「よし、それでいこう」と、私も覚悟を決めました。
もうこうなったら、ショーを楽しむどころではありません。


とうとう、開演時間になりました。
客席の後ろの方から、パーフォーマーが出てきて、
私のすぐそばを通り過ぎていきました。


「のんたんが、声をあげたり、しゃべったりしませんように。」


祈るような思いです。
ショーが始まりました。



(つづく)

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