MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
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34年ぶりのラオス、そしてタイへ。歩き続けた12日間 10 - 伝統芸術民族センター(TAEC)④ オマ族とマックスマーラ(2025年3月14日/1日め)

2025年3月14日 ナイトマーケットで。少数民族の手作り品がたくさん並んでいました。(ラオス・ルアンパバーン)


3月14日(金)- 1日め


伝統芸術民族センター(TAEC)に来ています。

ここまで、

 アカ族

 モン族

 タイルー(TAI LUE)族

 クム族

の民族衣装を見学してきました。


次は、特別展示室です。

この部屋では、

「最新のファッション雑誌における

 ラオスの伝統衣装」

について紹介されていました。


各民族の伝統衣装は、

各国・各地の博物館で展示されていますが、

「現在のモード界での存在感」

という切り口は初めて見るもので、

とても驚きました。


たとえば、これです。先ほど見てきた民族衣装がモチーフになってはいるものの、より洗練された感があります。

左端のタペストリーをご覧ください。ケン・ドーン(Ken Done)の作品のような、明るい雰囲気です。

が、これはすべて、モン族が手作業で刺繍したものです。

下のモン族による刺繍と比べると、絵柄のレイアウトは似ているものの、テイストはまったく異なるものです。

今まで、様々な場所で、民族衣装を何十回も見てきましたが、このようにアレンジされたものを見るのは初めてです。

マネキンの足元には、これまでに掲載された雑誌が置いてあるのですが、特に心惹かれたのは、このドレスでした。

あまりにすてきだったので、ネットでこの作品を探してみました。(eponine から画像をお借りしました)


ロンドンの eponine というブランドのドレスです。

デザインしたのは、Jet Shenkmanという女性。

1980年代の東南アジアで

フリーのスタイリストとして働き、

そのときの経験からインスパイアされたそうです。


正直言って、

博物館の伝統衣装を買いたいとは思いませんが、

Shenkman氏のドレスには魅かれます。

マーケットへの訴求力ははるかに高いと…。

そこで、eponineのサイトを、

もう少し見てみました。


左は、上の写真のドレス。右はロングスカートです。

これもロングスカート。見とれてしまいます。

あでやかな刺繍が施されたドレス。

モン族のスカートに施された200本ものプリーツが、こんなドレスに変わりました。


eponineのサイトでは、一つ一つの作品に、

「モン族の」とか「モン族の布を使用した」などの

記述があります。

(↑これが大事。)


40年前から山岳民族に興味があり、

たくさんの衣装を見てきた私たちには、

これらの衣装に

モンのテイストが取り入れられていることが、

すぐにわかりますが、そうでない人々には、

まずは「モン族」の存在を知ってもらうことが

彼らの文化に対する関心や敬意に

つながっていくのではないか、と思います。


ちなみに、これらの作品のお値段は、

大体50万円くらい…。😅😅


おまけの写真です。同じサイトに、「kimonoを使った」と記述されている作品もありました。刺繍や絞りが入っていて、かつては高価な振袖だったと思われます。^^


ここまで、山岳民族の文化とコラボして、

独自の作品を作り出している例を見てきました。


しかし、かたや、トラブルとなっている事例も、

博物館では紹介されていました。


これはオマ族の衣装。藍染の木綿に刺繍を施してあります。


【オマ族】

ラオス北部、ベトナム北西部、中国南部を拠点に農業を営む少数民族のひとつで、現在ラオスで暮らしているのは2000人を下回るとみられています。彼らを象徴するのは、藍染の生地に赤で刺繍を施した、美しい伝統衣装です。


上の写真の足元に置かれてあった雑誌です。これはイタリアのファッションブランド、マックスマーラが販売したロングドレス。思わず買いたくなるような、魅力的なデザインです。

このデザインに対して、「マックスマーラが無許可かつ無料でラオスのオマ族の伝統衣装のデザインを真似ている」と、伝統芸術民俗センター(Traditional Arts and Ethnology Centre/TAEC)が主張しています。TAECは、この伝統衣装のデザインはオマ族独自のものだとしています。(以下、TAEC の画像です)

袖口の写真です。モチーフのデザインは同じですね。

刺繍の形は、確かに似ていますが…。


【TAECの主張】

少数民族にとって、手工芸品の販売は貴重な収入源。有名ブランドが似たようなデザインの商品を販売してしまえば、彼らの商品のオリジナリティが損なわれかねない。マックスマーラに対し、売り上げの一部を「少数民族の知的財産権を擁護する団体」に寄付し、二度とデザインを真似しないことを要求します。


異文化から新たな着想を得ること自体は、

アートの世界で広く行われてきたことです。

が、このマックスマーラのドレスが、

「オマ族衣装の盗用」なのか、または、

「オマ族からインスパイアされたもの」なのか…。

それを判断するのは、とても難しいと思います。


夫は、

「オマ族のデザインを意匠登録するしかないのでは」

と言っていますが、

その作業自体もまた、かなり難しいと思います。

マックスマーラも、事前に、

「モン族の衣装から着想した」と、

ことわっておけばよかったのかもしれません。


TAECの要求に対して、

マックスマーラからの連絡はないそうです。


ヤオ族の女性。少数民族のお年寄りはいい表情をしているなあ、と思わされることが多いです。


これまでは、

「少数民族の存在をどのように知ってもらうか」

が、各国の支援団体の大きなテーマでしたが、

「彼らの文化をどのように守っていくのか」

という局面へと、

時代は変わっているのかもしれません。


いろいろと考えさせられてしまった、伝統芸術民族センター(TAEC)でした。


(つづく)

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