コロナでも上州2。からっ風に吹かれて歩いた群馬 2泊3日の湯めぐり旅 6 - 群馬会館⑤ 改修への熱意(2023年1月16日/1日め)
2023年1月16日 群馬会館で。(群馬県前橋市)
1月16日(月)
群馬会館のホールに来ています。
美しい内装の中でも、ひときわ目をひかれるのが、この壁面です。
MIYO、壁に近づいて、写真を撮りまくっています。笑
このときに撮った写真です。壁紙のとなりのブラケット照明(キャンドル)は、2016年の改修時に設置されました。設計者である佐藤功一氏がやはり設計している大隈講堂のデザインを参考に、本体は真鍮製、シェイド部分は摺りガラスにしたそうです。
壁の一面を覆っている、美しい壁紙。かつてはここに金唐革紙(きんからかわし)が貼られていました。現在は、金唐革紙を模した壁紙を採用し、創建当時のイメージを再現しているそうです。
【現在の壁紙】
創建当初の金唐革紙には、光による色の変化や立体感などの特徴がありました。それと同じ効果を持つ壁紙として、金地に紺色と銀色の植毛が施された壁紙を選定しました。見る角度によって表情を変えるその様は、当時の艶やかで迫力ある空間を彷彿とさせています。
群馬会館での、現在の金唐革紙は、かつてのイメージを再現したものです。オリジナルの物は、今も額に入れて展示されています。下の写真で、私たちの後ろに写っているのがそれです。
額に入れられて、今も残されている、オリジナルの金唐革紙。当時は、ブルーの地色に金色の花々を一面に描いていたと思われます。さぞかし豪華だったことでしょう。
金唐革紙は、以前にも見たことがあります。
北海道留萌郡小平町で訪れた、
旧花田家番屋(1905年頃の建築)で、
網元一家の居宅部分に使われていたものです。
旧花田家番屋で、床の間の反対側の襖に現在も残る金唐革紙です。日本郵船旧小樽支店(明治39年竣工)や旧岩崎邸(明治29年竣工)などでも使用されている、たいへん高価な紙でした。現在は、黒っぽい部分の色が抜けているのですが、もとは、ここに金で草花が描かれた豪華絢爛な襖でした。(2022年6月19日)
花田家番屋には、金唐革紙の一部が、今も美しいままに保管されています。群馬会館のものと似ていますね。^^ 青い地色に、金色の草花がびっしりと描かれています。この紙が襖全体に貼られていたら、さぞかし豪華だったことでしょう。(丸い容器に入っているのは金粉で、金唐革紙の補修に使われたようです。)
そしてこちらは、東京都・旧岩崎邸の壁を飾る、金唐革紙。1896年に竣工した邸宅です。(まろママさんのブログから画像をお借りしました)
この写真が掲載された、まろママさんの日記です。まろママさん、ありがとうございました。
12月23日 息子が職場を案内してくれました。岩崎邸庭園で優雅な気分。甘味処みはしの小倉あんみつは懐かしい気分。 - 美味しく楽しく暮らす記録
群馬会館では、2016年の改修時に、ステージを縁取るように、ブドウをかたどった模様のアーチが設けられ、創建当時の状態が再現されました。
こちらは、ケースに入れて展示されている、創建当初のアーチの一部です。プロセニアムアーチというそうです。
プロセニアムアーチのコーナー部です。ここには、葡萄の葉のレリーフが描かれていました。
【プロセニアムアーチ】
プロセニアム・アーチ(英: proscenium arch)は、観客席からみて舞台を額縁のように区切る構造物のことを言います。そのため、これによって縁取られた舞台を額縁舞台と呼ぶこともあります。
群馬会館のプロセニアムアーチでは、石膏に精巧な葡萄のレリーフが施されていました。2016年の改修では、現存する創建当初のアーチを覆い隠すようにして補修しました。そのため、アーチ開口が一回り小さくなっています。
アーチ内部は、木質板(MDF材)に創建当初の葡萄のモチーフを模写した彫刻で装飾しました。色彩についても、当時の近似色で仕上げています。
緞帳の周囲に、額縁のように設けられている装飾が、プロセニアムアーチです。緞帳、プロセニアムアーチ、そして金唐革紙を模した壁紙がみごとに調和して、すばらしい空間を作り上げています。
天井の照明の場所も、創建当初のままに配置されているそうです。天井には、レリーフが施された4本の化粧梁(はり)が設置されています。創建当初のオリジナルデザインを参考にしたものです。梁と壁がつながる部分には、コーベルがせり出しているのが見えます。
1930年当時の化粧梁の一部です。石膏に葡萄のレリーフが施されていました。創建当初の天井には、長さ約21メートルの化粧梁が5本連なり、豪華に装飾されていました。
【照明器具】
創建当初のものを再利用しています。以前ガラスだった部分は、安全性に配慮して水色のアクリル板に、中央部は演出照明として黄色系のアクリル板としています。また、灯光器は、白熱電球からLEDダウンライトに更新しました。
そしてこれがコーベルです。(説明パネルから)
創建当初、柱頭部はコーベルで装飾されていました。コーベルは石膏で造られており、精巧な彫刻が施されていました。
【コーベル】
群馬会館のコーベルはすべて撤去されていたため、2016年の修復時に再現しました。残されていた写真と、天井裏の痕跡から、各寸法を計測し、大きさやデザインを検討したうえで製作しています。
この写真では、コーベルがさらにはっきりと見えます。梁が壁に接する部分に設けられている装飾です。緩やかな曲線を描くバルコニー席先端の腰壁は、漆喰で仕上げられ、優雅な空間を演出しています。そしてコーベルの間に設けられている八角形の装飾窓もすばらしい。この窓からは、創建当初は外光を取り入れていましたが、2016年の改修では、演出照明として設置されました。
装飾窓です。(説明パネルから)
中央部には、星型多角形のステンドグラスがはめ込まれています。ステンドグラスの色は、中央の正方形が黄色、矢羽根部分は青のマーブル、隣接する正方形は赤と青のマーブル、その周りは半透明の黄色となっていました。周囲は木製額縁で装飾されています。
腰板のデザインは、「羽目板意匠」です。当時、設計者の佐藤功一氏が多く採用していたものでした。板材は杉で、板目の出る塗装が施されていました。
【改修時の特徴的な内装】
創建当初のプロセニアムアーチ装飾、化粧梁、コーベルなどは、石膏で造形されていました。が、現在は左官職人が減り、また、天井に取り付ける装飾も多いことから、軽量で自由に行える材料として、型で成型可能な「繊維強化プラスチック」を採用しています。
はじめは、群馬会館の美しさにばかり、
目がいきました。
ですが、様々な資料を調べているうちに、
見方が変わりました。
100年近く前に建設されたものを、
いかに改修し、当時の美しさを再現していくか。
現代の技術を駆使しながら、
佐藤氏の他の作品までも調べて、
最高の群馬会館を残していこうとする、
携わった方々の熱意に打たれました。
群馬県、すごいです。^^
最後にお願いして、いっしょに写真を撮らせていただきました。館内を丁寧に見学させてくださった職員の方に、心からお礼申し上げます。本当にありがとうございました。
美しい階段を降りて、出口へと向かいます。そして降りた先にあったのは、到着した時に見た、閉ざされたままの右面の扉でした。
なんと、閉ざされていた扉の鍵を開けてくださり、そこから外にでました。最後に、職員の方が撮ってくださったのが、この写真です。
この日記を書きながら、しみじみと思いました。
群馬会館は、群馬県の宝、ですね。^^
この美しい建物は、1996年(平成8年)、
国の登録有形文化財に指定されました。
群馬会館は、群馬県の宝であり、国の宝です。
さらに、リーズナブルな料金で市民が利用できる、
身近な公共施設であるのが、なおいいですね。^^
市民に愛される存在として、
これからも大切に保存されつづけることを、
心から願っています。
(つづく)