MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは24歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。
ベトナム日記は、
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ベトナム家族旅行:
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小学生だったころの子どもたちの育児日記は、こちらです。
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全盲難聴・のんたんの冬休み 7 - なつかしいね、のんたん。(2022年1月3日/9日め)(2021年2月5日)

2021年2月5日 なつかしいおもちゃに再会して、笑顔を見せてくれました。(全盲難聴・のんたん 25歳)


1月3日


パセラで、楽しい3時間を過ごしました。
家族カラオケは、
長男が帰宅した時には欠かせない、
我が家の年中行事です。


掲載しきれなかった写真です。笑


今年のカラオケで、うれしかったのは、
クラッカーを気に入った長男が、
いっぱい笑ってくれたことでした。


笑うということ…。


笑顔。それは、簡単なようでいて、
長男にはとても難しいことです。
長男は、「笑う」ということばを
知りません。
他の人が笑うのを見たことがないし、
ことばで説明したくても、
そのことばが、長男にはわかりません。


ブログに掲載している長男の写真も、
笑顔のものは、すべて、
本当に笑っているときに撮れたもので、
「笑ってね」と言われてつくった笑顔は、
一枚もありません。


私たちなら、
「はい、笑ってね。チーズ!^^」
などと言われたら、笑顔をつくります。
けれど、長男の場合、
カメラを向けて、
「笑ってね~」と言ってみても、
長男が笑うことはありません。
その理由は、長男には、
「笑顔を作る」ということが、
わからないからです。


あやすと笑ってくれた長女。でも、長男には、それができませんでした。長男はいつも、生真面目な顔。でも、男前だったなあ…。笑(1997年5月 のんたんとあみちゃん1歳9か月)

少しだけ笑っている長男の、貴重な写真。長女が来ている白い服は、クリスチャンディオールですよ。(←友人からいただいたおさがり。笑)(1997年3月 のんたんとあみちゃん1歳7か月)

もちろんたまには、こんな笑顔も。この頃は、長男にも遊べるおもちゃを、とにかく探していました。(1997年2月 のんたんとあみちゃん1歳6か月)


長男の笑顔を写真に撮るには、
本当に笑っている時を狙うしかありません。
けれど、
いい顔して笑ってるな、と思うときに、
すぐにカメラはでてきません。


ですから、小さいころから、
長男の笑顔を写真に撮るのは、
とてもむずかしいことでした。
そして、だからこそ、
たまに笑顔を撮れた時の写真は、
とても貴重でした。


「りんご」「バナナ」などのように、
手でさわっておしえられるものは、
少しずつ、長男も理解していきました。


けれど、「笑う」ということばには、
さわれません。
「見て理解し、覚える」ということは、
長男には、とてもむずかしいことです。


「うれしい」「おいしい」などという、
さわって知ることができないことばも、
伝えるのが難しいことばでした。
けれど、長い年月をかけて、
そういう体験をしたときに声かけしながら、
ひとつひとつの言葉を、
長男と共有していきました。


「体験」すること。
それは、長男にことばを伝えられる、
とても貴重な方法でした。


成長と共に、少しずつ増えていった、
長男の語彙。
けれど今でも、難聴の長男に、
伝えきれていないことばが、
たくさんあります。


でも逆に、
長男が成人した今だからこそ、
伝えられることばもあると、
最近になって気づきました。


昨年、断捨離をしていたら、
子どもの頃に長男が好きだったおもちゃが
たくさんでてきました。
そこでようやく、
「なつかしい」ということばを
長男に伝えることが
できるようになったのです。^^


小さいころのおもちゃをさわって、「なつかしいね」ということばを、初めて伝えられた日の長男。(2020年7月20日 24歳)

そのときの日記です。


このときに、
「なつかしい」ということばを、
長男が理解できたかどうかは、わかりません。
でも、
「忘れていたことを思い出し、
 それを愛おしむ気持ち。
 それが、『なつかしい』なんだよ。」
ということを、これからも、
長男に伝えていきたいと思います。


長男が小さいころに大好きだったおもちゃ、「エレキット」。夫がフリーマーケットで見つけたものです。これが、なぜか大ヒットで、長男のお気に入りになりました。


そのエレキットが、
しまいこんでいたおもちゃ箱から、
昨年、出てきました。
そこで、たまたま帰宅していた長男に、
触らせてみました。


長男、すぐに思い出して、耳にあてました。(2021年2月5日 のんたん25歳)

「これ、なあに?」「エレキット」 名前ももちろん憶えていて、難なく、スイッチを入れました。

「パッパパ~」「ビッ ビビッ」 なぜかこれが、長男は大好きでした。^^

真剣な顔で聞いています。

そんな長男に向かって、「なつかしいね。のんたん、なつかしいねえ。」と、シツコク話しかける母。笑

母のことは無視して、エレキットに夢中の長男。笑

最後に、笑顔を見せてくれました。久しぶりにエレキットの音を聞けて、うれしかったのだと思います。


そうだよ…。
それが、「なつかしい」って気持ちなんだよ…。


それを、長男に伝えたくて、
「なつかしいねえ。
 久しぶりに聞けて、うれしいねえ。」
と、長男の耳元で、何度も話しかけました。


長男は、エレキットに再会できたことが
とてもうれしかったようです。
そのまま、エレキットを
自分のリュックに入れて、
S園に持ち帰っていきました。^^


あれから、一年がたちました。
長男が「なつかしい」ということばを
理解できているかどうかは、
今もわかりません。^^


長男にうまく伝わっていれば、
それはそれで、とてもうれしい。
でも、いいのです。
たとえ伝わらなくても。
私たちは、長男の「今」に、
ただ寄り添うだけです。
幸せに、と願いながら。



(つづく)

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