コロナでも雛旅。古(いにしえ)の雛を訪ねる、4泊5日の長野・岐阜・愛知 12 - 田中本家博物館の江戸時代料理再現食事会①(2021年3月27日/2日め)
2021年3月27日 田中本家の、「春の江戸時代料理 再現食事会」で。(長野県須坂市)
3月27日
そもそも私たちが、
田中本家博物館を知ったきっかけは、
『フランス人がときめいた日本の美術館』
という書籍(集英社インターナショナル)でした。
日本美術をこよなく愛するフランス人の美術史家、ソフィー・リチャードが選んだ、「本当に訪ねる価値のある美術館」のガイドブック。美術ファンの間でベストセラーとなっているそうです。10年かけて、日本各地の美術館を訪ね歩き、綿密に取材を重ねました。専門知識に裏打ちされたわかりやすい解説、旅行者のための情報も盛り込まれた秀逸なガイドとして、英語圏で高く評価されました。日本語版では、各美術館へのコメントや、日本の読者へのメッセージなどを追加しています。
この本をもとに番組化したドキュメンタリー、
『フランス人がときめいた日本の美術館』(BS11)
を、たまたまテレビで見たことが、
今回の旅のきっかけとなりました。
田中本家博物館では、
来館者が楽しめるイベントや企画展を
多数、開催しているのですが、
そのひとつが、この、
「江戸時代料理再現食事会」
です。
私たちの席です。
一品めの蓋茶碗と盃です。盃には、薄紙を置く心配りも。そして右側には、本日のお品書きとナプキンが置かれていました。
和紙(雲龍紙)に書かれた、本日のお品書きです。雲龍紙は、ちぎった楮(こうぞ)の長い繊維を入れ、雲のような模様を描いたもので、落ち着いた華やかさがあります。
過去の料理の内容を、どうしてここまで細かく再現できるのでしょうか。その秘密は、田中本家に伝わる、萬賄方控帳(よろずまかないかたひかえちょう)にあります。(下の写真は、テレビ番組の画面を撮りました。)
いつ誰がどこで何を食べたかが、細かく記録されています。これは、次にいらしたときにもっとおいしいお料理でもてなすための配慮でした。田中本家には、このような記録が、すべて保管されているのです。
この日の「江戸時代料理再現食事会」では、
嘉永2年1月に、
上田藩、飯山藩、須坂藩の御家老方を
おもてなししたときの、
「新年ご接待料理」を、
「諸客賄い方控帳」の記録のとおりに、
再現しているそうです。
それでは、私たちがいただいたお料理を、
ご紹介いたします。
お料理の器は、すべて、
田中本家に代々伝わるものです。
お料理と共に、器の美しさにも、
ぜひ、ご注目ください。
蓋茶碗。器には、彩りとして、大王松の葉が置かれています。これは、田中本家の庭で摘み取ったものです。
田中本家の大王松(ダイオウマツ、ダイオウショウ、英名:longleaf pine)です。米国南東部に分布する松で、葉が長いことが特徴です。また、通常の松が2本一組の葉であるのに対し、この松は3本が一組になっています。
まずは、須坂の澄酒で乾杯。夫は運転するので飲めず、いただいたお酒は、MIYOがひとりで全部飲みました。笑
田中本家の手ぬぐいを、ナプキンとして膝に置きます。
お食事が始まりました。
徳利: 澄酒
染付 松竹梅 鶴模様 伊万里焼
蓋茶碗: 短冊蘿蔔(らふく。だいこんのこと)、短冊胡蘿蔔、丸十小角、生麩、木耳、胡桃掛け
錦手 蓋茶碗 伊万里焼
吸物: 鱈筒切り、薄雪昆布、霰(あられ)柚子、青葉
根来蒔絵 吸物椀 京漆器
*控帳にはありませんでしたが、3月なので、手毬麩を添えたそうです。
それぞれの蓋の裏側にも、美しい柄が施されています。
ここで、お茶が運ばれました。
茶: 煎茶
白磁 花模様 中国青磁 清朝
まさか、湯飲み茶わんで、
清朝の青磁が出てくるとは…。😲😲
度肝を抜かれました。
お料理は、正直言って、
「それほどおいしくないだろうな。」
と思っていました。
現代と比べたら、
ずっと素朴な味付けだったでしょうから。
それでも、とにかく、
「食べてみたかった」のです。
畳に座って、足が痛いのを我慢しながら、
箱膳の懐石料理みたいなのを
いただくのだろう、と
想像していました。
ところが。
お料理をひと口いただいて、
たじろぎました。
おいしいのです。
優しい味の胡桃掛けは、信州ならでは。
そして、薄雪昆布のほろほろとした、
口あたりも楽しい、お吸い物。
たった2品で、すでに感動しています。^^
あらためてお品書きを見ると、
全部で12品。
こんなのが、12品も続くのでしょうか。😅😅
なにか、すごい世界に迷い込んだような、
そんな気がしてきました。
(つづく)