MIYO'S WEBSITE-全盲難聴のんたんの育児記録と卵巣ガンで思ったこと

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは21歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。

全盲難聴・のんたん - にはくりょこうの おみやげだよ⑤

2010年夏のベトナム・カンボジア旅行。ホーチミン・戦争博物館の前で。
(のんたんとあみちゃん 14歳)



6月24日、ウクレレ発表会で演奏するために、
長男がS園から帰宅しました。


夕食は、近所の焼き肉屋さんへ。
そこで、早速、長男に聞いてみました。


「のんたん、おかあさんのおてがみ、とどいた?」


けれど長男は、返事をしません。
なんのことだかわからないようです。


「のんたん、点字のお手紙、おかあさんがおくったでしょう?」


ことばを変えて、なんどか訪ねてみましたが、
答えはやはり、かえってきません。


夫は、
「やっぱり、手紙の内容がわかってないんだよ。
 点字、読もうとしないし。」
と、はじめから期待していないような口ぶりです。
(まあ、夫は、いつもこうなんですけどね…。)


えー そうかなあ。
せっかく、一生懸命、点字を打ったのに。
S園の先生だって、長男といっしょに読んでくれたのに。
のんたん、意味がわからなかったの?
そんなことないよね…。


母の気持ちなどおかまいなしに、
長男は、元気に焼肉を食べ続けていました。


帰宅して、お風呂に入った後、
長男に牛乳とおやつを出した私。
やっぱりあきらめきれなくて、もう一度きいてみることにしました。
でも、さっきと同じ尋ね方をしても、結果は同じはずです。
そこでひと工夫を。


私が送ったお手紙は、
普通の絵葉書に、点字を打った紙を貼りつけたものでした。
そこで、同じサイズの絵葉書を、長男にさわらせました。


「のんたん、これ、なに?」


長男はそれをさわり、少し考えているようでした。


「おかあさん、S園におくったよね。
 のんたん、うけとったよね。」


長男の耳元で、ゆっくりとそう言うと、長男、突然、


「てんじのカード…」


とつぶやいたのです。


「そうだよ、のんたん! 
 点字のカードだよ!!!」


そうだったのです。
長男にとって、あれは、「おてがみ」ではなく、「点字のカード」だったのです。
「おてがみ」というものを知らないのだから、
「おてがみ、受け取った?」ときかれても、
長男には、なんのことだかわからなかったのでしょう。


そして、私がはがきをさわらせたことで、長男は初めて、
「あっ このあいだうけとった、点字のカードのことだ!」
と気がついたのです。


「おみやげ! ありがとう! チーズケーキ!」


いきなり、長男がしゃべりはじめました。
そうです。
私が問いかけている意味を、長男はようやく理解し、
その手紙に書いてあったことを思い出してくれたのです。


つながった、と思いました。


「そうだよ、のんたん!
 点字のカードだったね。
 あれは、『お、て、が、み』って言うんだよ。」


「おてがみ…」


長男もくりかえしました。
S園で、点字のカードを受け取って、先生といっしょに読んだときに、
「おかあさんからだよ」と、おしえてもらっているはずなのですが、
そのときの長男には、意味が理解できなかったのでしょう。


 点字のカードを受け取った。
 「おみやげ、ありがとう」と書いてあった。
 S園から離れたところにいる、おかあさんが打った点字だった。


それらの事実を、帰宅して私と話してみて、
長男はようやく、一連の出来事だとわかったのです。
そして、それが「おてがみ」というものだということも。


うれしくて、長男をぎゅっと抱きながら、言いました。
「のんたん、おてがみだよ。
 おてがみ。
 おかあさん、また、おてがみ 書くからね。」


これからも、点字のお手紙を、長男に送ろう、と思いました。
少なくとも、次に受け取ったときには、長男は、
「おかあさんからだ。」
とわかるはずです。


何度も何度も受け取れば、長男の中で、
「おかあさんから、おてがみがきた」
という事実が、よりはっきりと理解できるようになることでしょう。


そこからです。
そこから始めていこう、と思いました。
長男の中で、「おてがみ」という言葉が、
今ようやく、スタート地点に着きました。


いつか、
「おとうさんからとどいても、『おてがみ』」
「**さんからとどいても、『おてがみ』」
「おてがみって、こういう意味なんだ。」
と、長男が気がついてくれるといいな…。


「りょこう」から始まって、「おみやげ」→「おてがみ」と。
また少し、長男のことばの世界が広がったようで、
ちょっとうれしくなりました。

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