MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは24歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。
ベトナム日記は、
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をご覧ください。
ベトナム家族旅行:
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小学生だったころの子どもたちの育児日記は、こちらです。
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全盲難聴・のんたん - 「なつかしいね」(2020年7月21日)

2020年7月21日 なつかしい「タクー」と。(全盲難聴・のんたん 24歳)


7月21日


先日、家の掃除をしていたら、
なつかしいものがでてきました。
子どもたちが小学生の時に使っていた、
ハミガキのおもちゃです。



子どもたちが3歳くらいのころに、
私の母が送ってくれたものです。
双子だからということで、
母は、このおもちゃをふたつ、
買ってくれました。
色は、水色と黄色です。
そのうちの、水色の方が、
古いおもちゃ入れから出てきたのです。


このおもちゃ、下の部分に、
歯ブラシをひっかけるようになっています。
そして、歯ブラシを取り外すと、
スイッチが入り、「ハミガキの歌」を、
3分間、歌い続けるのです。^^
子どもたちが小さい頃は、歯をみがくときに、
必ず、この「ハミガキの歌」を、
聞かせていました。


わあ、なつかしい。
…と思い、スイッチを入れると、
今でもはっきりと音楽が流れます。
15年くらいしまったままだったのに、
壊れていなかったんですね。^^


そこで、今年のS園の夏まつりに、
このおもちゃを持っていくことにしました。
長男に、「なつかしい」ということばを
おしえたかったからです。


全盲・難聴の長男は、
見たり聞いたりして「ことば」を知る、
ということが、なかなかできません。
なので、小さいころから、なんでも体験しながら、
少しずつ、ことばを覚えていきました。
たとえば、りんごを触らせ、食べさせながら、
「りんご」ということばを教えるわけです。


形のあるものは、
そうやって教えることができるのですが、
形のないものは、伝えることがむずかしく、
なかなか教えることができません。
「なつかしい」ということばも、そうでした。
体験できないことは、理解できません。
だから長男は、
「なつかしい」という言葉を、知りません。


久しぶりに、このおもちゃを見つけて、
私自身が「なつかしい」と思った気持ち。
その気持ちを、そのまま長男に感じてもらって、
「なつかしい」という言葉を、
長男に教えることができるといいな、
と思ったのです。


というわけで、バッグの中に、
このおもちゃを入れて、
S園の夏まつりにでかけました。^^


当日は、半年ぶりに長男と会い、
いっしょにお昼ごはんを食べました。
その後、S園の中の小さな部屋をお借りして、
私たち家族だけで過ごしました。
夏まつりの会場に入れる時間まで、
1時間ほどあったので、長男と、
ウクレレを弾いて過ごすことにしたのです。


部屋に入り、イスに座った長男に、
ハミガキのおもちゃを渡してみました。



「長男、これを覚えてるかな。」
と、ちょっと心配だったのですが、
「これなあに?」
と訊いてみると、すぐに、
「タクー」
と。


私も夫もびっくり。
何年も使っていたのに、
このおもちゃがタクーという名前だったなんて、
すっかり忘れていたのです。笑


でも、長男は、覚えていました。
そのうえ、迷うことなく、
下の部分のスイッチを押しました。


「こんにちは! ぼく、タクー!」


軽快な音楽と共に、
おもちゃがしゃべりだしました。


「うわ、ほんとにタクーって言ってるよ。笑」


長男は、私たちよりもずっと鮮明に、
このおもちゃのことを覚えていました。
そして、おもちゃに合わせて、
お歌も正確に歌ってくれました。
すごいです。笑


スイッチを押して、音楽を何度も鳴らしていました。うれしそうですね。^^

タクーを耳にあてて、じっと聞いている長男。


タクーの音楽を聴いている長男の耳元で、
「のんたん、小さいころに、
 いつも聞いていたおもちゃだね。
 なつかしいねえ。
 なつかしい、おもちゃだねえ。
と、何度も話しかけました。
たぶん、伝わっていないと思いますが…。


でも、あきらめず、これからも、
くりかえして、言ってみるつもりです。
15年も前のおもちゃにさわって、
長男は、初めて、
「なつかしい」という気持ちになったはず。
その気持ちを、「なつかしい」って言うんだよ、
と、いつか伝えられるといいな、
と思います。


「なつかしい」ということばは、
子どもの頃の長男には、
絶対に理解できないことばでした。
大人になった今だからこそ、
長男にも「なつかしい」と感じるものがあり、
だからこそ、長男に
おしえることができることばなのです。
しみじみ、大人になったんだなあ、と感じ、
うれしくなりました。^^



(おわり)


13歳(中1)の長男。お休みの日は、おとうさんとよくおでかけしました。
左上:デパートの屋上で遊ぶのが大好きでした。(2008年12月21日)
右上:乗り物の壁面に両手をあてて、振動を感じています。(2008年12月28日)
左下:都電荒川線にも、よく乗りました。(2009年2月28日)
右下:電車の中でも、壁面に両手をあてて、振動を感じています。

朝の登校時の写真が多いのは、夫が毎朝、長男をスクールバス停まで送っていき、そのときに写真を撮っていたからです。その写真を添付して、「のんたんは今日も元気にスクールバスに乗りました。」というメールを私に送るのが、夫の日課でした。笑
左上:(2008年11月10日)
右上:(12月1日)
左下:(12月3日)
右下:(12月18日)

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