MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは24歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。
ベトナム日記は、
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をご覧ください。
ベトナム家族旅行:
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小学生だったころの子どもたちの育児日記は、こちらです。
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定年でもベトナム。ハノイで始める、お仕事日記 193 - ありがとう、ベトナム。(2019年10月29日-30日/59日め-60日め)

2019年10月29日 楽しい2か月でした。


193回も連載を続けて、ほんと、私ってアホじゃないの、と自分でもあきれながら、書き続けた6か月でした。
2か月分の日記がこんなにも長くなるとは、思ってもいませんでした。
連載中に、「ハノイ情報」カテゴリーで1位をいただき、読者登録数は700人を越えました。
お心を寄せてくださった方々に、心からお礼申し上げます。
たくさんの方々に読んでいただき、応援していただいたことがはげみになり、書き続けることができました。
本当にありがとうございました。


10月29日


ノイバイ空港に到着しました。
空港ビルの前は、すごい人だかりで、
入場制限されていました。


この人だかりは、もしかして…。


以前、これについてのブログを
読んだことがあったので、
こんなに大勢の人がいる理由は、
すぐにわかりました。


ビルの中に入れてもらえない人々でいっぱいです。


MIYOが乗ることになっている、
成田行きVJ932便と同じフライトで、
おそらく、日本への実習生が、
出発するのです。


一度に200人くらいが、まとまって行くのですが、
3年は帰国できないということで、
家族がそろって見送りに来ます。
その、見送りの人で、
空港前に人があふれていたのです。


全員が出発ロビーに入ると、
たいへんな騒ぎになってしまうため、
実習生が日本に出発するときは、
出発ロビーへの入場制限がかけられます。
ロビー内に入れるのは、実習生本人だけ。
見送りの人たちは入れてもらえないので、
ここでお別れになります。


一人ひとり、搭乗券とパスポートをチェックされて、実習生本人だけが、ビル内にいれてもらっていました。


MIYOも、パスポートを出そうとしたのですが、
見た目で日本人だとわかってもらえたようで
(よかった。^^)
顔を見ただけて、中に入れてもらえました。笑


ベトジェットのカウンター。ここもすごい人で、50メートル以上の行列ができています。黒いジャケットの実習生らしい人たちも、大勢並んでいました。やっぱり今日は、彼らの「出発の日」なのです。

お揃いのネクタイと、黒いジャケット。初めてスーツを着ましたって感じで、全然似合ってません(苦笑)。


なんとか荷物を預けて、
次はセキュリティチェックです。
ベトナムの空港では、
搭乗前のセキュリティチェックのときに、
毎回、靴を脱いで、
裸足で土足の床を歩かされるんです。


MIYOは、それがいやだったので(苦笑)、
今回は、スリッパを持ってきました。


セキュリティチェックだけのために、日本から持ってきた、不織布のスリッパ。笑 何年も前、旅行した時に、どこかのエアラインでもらったものです。

ベトジェット VJ932 便は、定刻どおり、0時55分に出発の予定です。こんな夜遅い時間ですが、ほんの2,3時間の間に、30便以上もの飛行機が飛び立つことになっています。なので、搭乗ゲートは人がいっぱいです。この時間に出発すると、日本や韓国には朝到着するので、都合がいいみたいです。

VJ932 便に搭乗するのを待っている人たち。黒いジャケットの実習生だらけで、まるで修学旅行みたいです。みんな、出発直前に散髪屋さんに行ってきたようで、髪がすっきりと整っています。うれしそうな笑顔。これから日本へ行くということで、日本での生活への期待感でいっぱいなのでしょう。

いよいよ搭乗です。

ゆっくりと、タラップを上がりました。ベトナムでの生活が、これでようやく終わりました。


私の座席は、前後左右、全部、
若い実習生たちで占められていました。
まるで、昔、東北から上野に向かった、
「集団就職」の列車みたい…。笑


今や、世界に冠たる出稼ぎ大国になってしまった、
ベトナム。
そう、彼らは、これから3年間、
日本で働いて、お金を貯めて帰るのです。


機内の座席のほとんどが、
実習生で占められているのを見ていると、
まるでこの飛行機そのものが、
「出稼ぎフライト」となってしまっているような、
そんな気がしました。


日本へ行く、出稼ぎ実習生に囲まれて、
日本へ帰る、私。
そう。考えてみたら、私自身もまた、
「出稼ぎ労働者」として、
ベトナムに来たのです。


「出稼ぎフライト」で帰るなんて、
いかにも、ベトナムらしい気がしました。
2か月間のお仕事を終えて、
200人の実習生と共に、
「出稼ぎフライト」で帰ることも、
なんだか、とても私らしくて、
笑えました。


10月30日


目が覚めたときには、機体はすでに、
高度を下げ始めていました。


朝8時。成田空港に到着です。ハノイからは、5時間のフライトでした。

飛行機を降りてからも、到着ロビーまで、ずっと、実習生のみなさんといっしょでした。

シャツもお揃い。^^ ほんと、修学旅行みたい。笑

みんなで記念撮影。


到着ロビーに並んで、
記念写真を撮る実習生の顔は、
だれもがうれしそうで、輝いていました。


きっと、私自身も、
2か月前に初めてハノイに着いたときは、
同じような表情だったんだろうなあ…。


たった2か月でも、いろいろあったけれど、
これから日本で3年間働く彼らに比べたら、
私のお仕事なんて、
お遊びみたいなものだったことでしょう。


私なんかの苦労とは比べ物にならないくらい、
多くの困難を、これから、
彼らは乗り越えていくのでしょう。


これから日本で、
たくさんの良い人に会えますように。
彼らが、日本の楽しい思い出を、
たくさん持ち帰ってくれますように。


そんなことを願いながら、
私も、旅行かばんを引きずり、
駅へと歩きだしました。
重い、重い、ほんとうに重い、かばんでした。


ドンスアン市場で買った、パスポート入れ。


日本に戻ってきて、4か月が過ぎました。
現在私は、学校に通っています。
職業訓練校の「観光総合ビジネス科」で、
一日6時間の授業を受ける日々です。
ベトナムで、旅行会社に勤務していたことがきっかけとなり、
結局、観光について学ぶことになりました。


ベトナムから帰国して以来、
2か月間もの間、私は、毎日、
それまで働いていた会社のメールを
モニターし続けました。
そして、折りに触れて、
アドバイスを送っていました。
別に、そんなことをしなくてもよかったのですが、
気になって、そうしないではいられなかったのです。


さらに、
ベトナムで働きながら、
悩んだこと、納得できなかったことなどを、
何か月も、夫に話し続けました。


「なんども同じ話をして悪いけど、
 どうして彼らはあんなふうだったのか、
 やっぱり、その答えを知りたくて、
 何度も何度も、考えてしまうんだよね…。」


すると、夫がこう言いました。


「ベトナムに、心を置いてきたな。」


その言葉を聞いたとたん、
なぜか、涙がぱらぱらと出てきて、
自分でもおどろきました。


たしかに私は、ベトナムに、
なにかを置いてきてしまったのかもしれません。
いつか、それを、取りに戻ろうと思います。
私の大好きな、ベトナムへ。
あの、光に満ちた、ハノイへ。


あれほどまでに、毎日が楽しく、
わくわくし続けた日々は、
自分の人生の中で、
そう何度もなかったと思います。


私の人生の中で、
最高に楽しかった瞬間を5つあげなさい、
と言われたら、
このベトナムで過ごした2か月は、
確実に、その5つの中に入ります。


ハノイの街並みを眺めながら、
どこまでも歩き続けた日々を、
これからも忘れることはないと思います。
ほんとうに、なんと表現していいかわからないくらい、
幸せな2か月でした。


ありがとう、ベトナム。


(おわり)

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