MIYO'S WEBSITE-全盲難聴のんたんの育児記録と卵巣ガンで思ったこと

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは21歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。

のんたん、雨を理解する


(のんたん日記18をスタートしました。以下、抜粋です。)


のぞみは、全盲・難聴です。
通常なら、「雨」は、見てわかります。「雨音」は、聞けばわかります。
けれど、全盲ののぞみは、生まれてから一度も、雨を見たことがありません。
難聴ののぞみが、雨音に気づくこともありませんでした。


「雨」を知らないのぞみに、「雨」を教えたい…。
そのためには、母である私と、まだ赤ちゃんに近かったのぞみとの、
日常の小さなやりとりを積み重ねていくしかありませんでした。
それは、ほんのちょっとしたことでしたが、私にとっては、とても楽しいやりとりでした。


4歳の冬に初めて、
「あめ」
とことばで言えるようになったのぞみは、
その後も、さまざまなエピソードを通じて、少しずつ、
「雨」を自分のものにしていきました。


今、「のんたん日記」を読み返してみて、
盲ろう児であるのぞみが、どのようにして、
「雨」というものへの理解を深めていったかを、
とてもなつかしく思い出しています。


のぞみは、今、21歳です。
このごろは、
「今日は雨が降っているから、お出かけはしないよ。
 おうちの中で過ごそうね。」
と父親に言われると、
「じゃあ、家でごろごろ、ね。」
と、ちょっと残念そうに言い返すようになりました。


家族の、何気ない、普通のやりとりです。
でも、かつては、「雨」の存在すらも知らなかったのぞみが、
今では、そんなやりとりを普通にしてくれていることを、
うれしく思います。


私にとって「雨」は、今でも、
のぞみの成長の軌跡をなつかしく思い出させてくれる、
たいせつなキーワードなのです。


(写真は、のんたん9歳。両手で雨を感じています。)


   「のんたんの雨」シリーズはこちらをご覧下さい。
     のんたん日記   20.雨 (2000年2月26日記・のぞみ4歳)
     http://limings.sweet.coocan.jp/nontan01/nontan0120.html
     のんたん日記2  21.雨に歩けば (2001年5月20日記・のぞみ5歳)
     http://limings.sweet.coocan.jp/nontan02/nontan0221a.html
     のんたん日記3  27.雨のにおい (2002年6月12日記・のぞみ6歳)
     http://limings.sweet.coocan.jp/nontan03/nontan0327.html
     のんたん日記5  2.雨は手のひらにいっぱい 
              (2003年8月14日記・のぞみ8歳)
     http://limings.sweet.coocan.jp/nontan05/nontan0502.html
   のぞみと「雨」のふれあいの軌跡です。


その他の記録は、
ガンになって
http://limings.sweet.coocan.jp/miyo01/miyo1701.html
をご覧下さい。
MIYO'S WEBSITE(全盲難聴の、のんたんの育児記録)
http://limings.sweet.coocan.jp/
も、少しずつ更新しています。



人生でいちばん悲しかった日

「ガンになりました。再発しました。」
と言うと、誰もが驚き、そして気遣ってくれます。
「でも、なんでそんなに冷静なの? すごいね。」
と言う人もいます。


すごいかどうかは別として、
動揺していないのは、たしかです。
なぜ自分だけが、と思うこともないし、
不運を泣いて悲しむようなこともありませんでした。


悲しいか? と尋ねられれば、
   んー…。悲しい気持ちはない、かな?
と思います。
その理由は、わかっています。
自分の人生で、いちばん悲しかったことが、
もっとずっと前に、すでに起こっているからです。


それは、超未熟児で生まれた長男が、失明してしまったことです。
たいせつな我が子が、生後数ヶ月で失明してしまった日。
救急車で、NICUから専門病院に搬送された息子を追いかけて、
ひとりで電車に乗り、バスに乗り継ぎながら、
ずっと、涙が止まることはありませんでした。
私のこれまでの人生で、いちばん悲しかった日、でした。


あの日は、本当につらかった。
自分の子どもが失明する悲しさと、
自分自身がガンになったときの気持ちなんて、 
比べるようなものではありません。
けれど、あのときのことを思うと、
今の自分のガンなんて、どうってことないように思えます。


今、ガンという試練に見舞われても、それを悲しいと思えないのは、
あまりにも大きな悲しみを、すでに知ってしまったせいなのかもしれません。
多分、私の人生で、あのときよりも大きな悲しみは、
これからも起こらないのではないかと思います。
(そう願っています。)


今、ガンになっても、悲観したり落ち込んだりせず、
淡々と生きている自分がいます。
今の私は、
あの、人生でいちばん悲しかった日の長男に、
支えてもらっているのかもしれません。



その他の記録は、
ガンになって
http://limings.sweet.coocan.jp/miyo01/miyo1701.html
をご覧下さい。


ガンになって、やったこと
http://limings.sweet.coocan.jp/miyodos/miyodos00.html
MIYO'S WEBSITE(全盲難聴の、のんたんの育児記録)
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ボランティアさんと共に育つ - のんたん日記4

のんたん日記4を、ようやく整備し、ホームページに掲載しました。


長男・のんたんは、全盲難聴です。
けれど、保育園や学童に助けられて、
私たち夫婦はずっと、共働きを続けました。
小学校入学からの12年間は、放課後や長期休暇のほとんどを、
大勢のボランティアさんに助けられてきました。
12年間で、のべ何千人のお世話になったことでしょうか。
たくさんのすばらしい方々と関わりながら育ったのんたんは、
他者に信頼をよせる、天真爛漫な子どもとして成長していきました。


のんたん日記4では、
小学校に入学し、ボランティアさんと共に毎日を過ごすようになった、
そのはじめの一年のことを、細かく記録しています。


10年以上前の記録ですが、
障害のあるお子さんを育てている方々に、
「子育てを、ひとりで抱え込まないで。
 こんな子育ての方法もあるんですよ。」
というメッセージを感じていただけたらうれしいです。


のんたんの夏休み(「のんたん日記4」から)
http://limings.sweet.coocan.jp/nontan04/nontan0430a.html
をご覧下さい。


その他の記録については、
のんたん日記4
http://limings.sweet.coocan.jp/nontan04/nontan0400.html
ガンになって
http://limings.sweet.coocan.jp/miyo01/miyo1701.html
ガンになって、やったこと
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親の役割

長男・のぞみは、3年前から、
東京都にある盲重複障害者施設、「S園」で生活しています。
長男は全盲・難聴です。
自分でできることはたくさんあるけれど、
できないこともたくさんあります。


そんな息子が施設に入った当初は、
私も、夫も、娘も、みんな、なんだか手持ちぶさたで、毎日、
「いまごろ、のんたんはなにをやってるかなあ。」
と、家族の誰かはつい言ってしまう、というありさまでした。


けれど、はじめの数ヶ月が過ぎると、
家族の誰もが、長男の居ない暮らしにも慣れてしまいました。
それまでは、なにかをするにも、どこかへ出かけたりするにも、
家族4人がいっしょに行動するのが当たり前でした。
休日に、家族の誰かが外出する場合は、
「誰が長男と一緒に過ごすのか。」
が、私と夫の間での、最重要確認事項でした。
長男を、家にひとりで残しておくことはできなかったからです。


18年間、「なにをするにも、家族いっしょ」だったのですが、
今では、週末になると、夫はひとりで出かけてしまいますし、
娘は、友達と遊びに行ったり、図書館に行ったりと、
それぞれが自由に過ごしています。
どこの家にもある、ごく普通の家族のようになってしまいました。


障害のない娘よりも、障害のある息子の方が先に自立してしまうとは、
思ってもみませんでした。
ちょっと寂しい気持ちもあるけれど、
「子どもは成長して、家を出て行くのがあたりまえなのだから。」
とも思います。


早いもので、S園での生活も3年目になりました。
長男は、自分で希望して行っただけのことはあり、
S園で、毎日楽しく生活しています。
「もう、親の役割は終わり。」
と私は思っていました。


S園では、毎年10月に、大規模なバザーが開催されます。
今年度のバザーが開催されたのは、
私の4回目の抗がん剤治療が終わったころでした。
体調は万全ではなかったけれど、
息子の顔が見たさに、電車で2時間半かけて、S園まで出かけました。


その、バザー会場でのことです。
「おかあさん、だいじょうぶですか?」
いつもお世話になっている、S園のT課長が、気遣ってくださいました。
私は、いつも思っていたことを、率直に言いました。
「『自分がいつ死んでも、もう、この子は大丈夫。もう心配することはない。』
 と思っています。
 病気になっても、後の心配をしないでいられるというのが、
 どれほどありがたいことか…。
 いつも、皆様に感謝しています。」
すると、間髪を入れず、T課長は、こう言われました。
「とんでもない。
 おかあさんには、これからも、
 シバガキくんの成長を、いっしょに喜んでもらわないといけません。
 どうぞ長生きしてください。」


え? と思いました。
 子育てはもうおしまい。
 もう、息子といっしょに暮らすこともない。
 親の役割は、終わったんだ。
 もう、いつ死んでも大丈夫なんだ…。
長男がS園に行ってからずっと、そう思っていました。


けれど、そうではないのだと、気づかされたのです。
長男は、これからも成長を続けていくし、
まだ、親の役割は残っていました。
「息子の成長を、いっしょに喜ぶ」という役割が…。
なんとうれしく、楽しい、役割でしょうか。


「これからも、長男の成長を楽しみに、生きていく…。」
それはまるで、18年間、子育てをがんばってきたことへの、
ごほうびのように思えました。
そんなことを、さらりと言ってくださったT課長への、
感謝の気持ちでいっぱいになりました。


 これからも、成長を、いっしょに喜んでもらわないと。


帰り道、T課長の言葉を思い出し、涙が出ました。
S園に入れていただいて、よかった…。
ただただ、そう思っていました。






その他の記録については、
ガンになって
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今でよかった

あれは、2008年12月のことでした。
微熱が、10日以上続いたことがありました。
「ただのカゼ」と信じて疑わなかった私は、
毎日、バッファリンを飲んで熱を下げ、出勤し続けました。


それでも、一応、週末に、
近所の産婦人科クリニックに行ってみました。
持病で卵巣嚢腫を抱えていたので、
体調不良はそのせいかもしれない、と思ったのです。
検査をすると、医師から、
「腫瘍マーカーの数値が、普通の人の10倍あります。
ガンの疑いがあるので、紹介状を書きます。」
と言われました。


当時、全盲・難聴の長男は、中学一年生でした。
入院・手術のあいだ、長男をどうすればいいのか。
それだけではなく、もしもガンが治らず、自分が死んだら、
誰が長男を育てていくのか。
健常児であれば、夫ひとりでもなんとかなるでしょう。
でも、障害のある長男を残していけば、
いろいろなことのしわ寄せは、結局、長男自身に行きます。
それを考えると、ただ、涙がでました。
「この子をどうするのか。」
ガンかも知れない、と言われて、
私の頭の中にあったのは、ただそれだけでした。


結局、そのときは、ガンではなく、卵巣嚢腫が原因の腹膜炎でした。
けれど、
「ガンの疑い」
と言われたときの切なさを思いだすと、
今でも涙がでてきます。


あれから8年あまりが過ぎました。
今、本当のガンになってしまったけれど、
あのときほど悲しい思いはしていません。
いちばんの気がかりだった長男が、
3年前に自立し、家を出たからです。
「私が病気になっても、もう、長男が困ることはない。」
そう思うと、不思議に、穏やかな気持ちになります。


ガンになって、いいはずがない。
ガンになってよかったなんて、思えるわけがない。


それでも、この病気になるのが、私の運命なのだったとしたら、
これまでの人生のどこかで、ガンになるしかなかったのだとしたら、
「それが今でよかった。」
と思ってしまうのです。




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