MIYO'S WEBSITE - 全盲難聴のんたんの記録と卵巣ガン、そして旅日記。

超未熟児で生まれた後遺症で、全盲難聴(盲ろう)となったのんたん、双子の妹あみちゃんと共に楽しく生きる家族のお話です。
子どもたちは24歳になり、毎日元気に楽しく暮らしています。
卵巣ガンになって思ったことも、少しずつ書き始めました。
ベトナム日記は、
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ベトナム家族旅行:
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小学生だったころの子どもたちの育児日記は、こちらです。
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全盲難聴・のんたん お箸で食べて、びっくり。

ベトナム料理屋さんで。お箸でフォーを食べています。(全盲難聴・のんたん 19歳)



全盲の長男は、目で見て、自然になにかを覚える、ということができません。
たとえば、「食べること」。
「食べる」というのは、人間が本能として自然に行うことだと、
私は思っていました。
が、長男を育ててみてはじめて、
「他の人が食べているようすを見て、
赤ちゃんは自然に、『食べること』を知っていくのだな。」
と知りました。


わけのわからないものを口の中に入れられたら、
誰だって当惑します。
口の中に入れてもらったものは、そのまま噛んで飲み込んでいいんだよ、
と伝えたくても、
難聴の長男に説明することができません。
だから、小さい頃から、長男に食べさせることには、
かなり苦労したと思います。(←昔のことで、もうあまり覚えていません。^^)


ましてや、「自分で食べる」ということをおしえるのは、
もっと大変でした。
それでも、どうにかこうにか、
スプーンで食べることまではできるようになったのですが、
お箸というのは、とても難易度が高いものでした。


盲学校で、「今年度の目標」として、
「箸を使って食べる」という項目を入れていただいたこともありました。
給食はいつも、担任の先生といっしょに食べます。
毎日、担任の先生がつききりで指導してくださっても、
長男が箸を使えるまでにはいたらず、
高等部を卒業となりました。


卒業後、長男はS園での生活をスタートさせました。
入所のとき、先生から、
「なにかご要望はありますか?」
と訊かれた私。
ついつい、お箸のことをお願いしてしまいました。


「お箸は、高校三年まで、担任の先生もがんばってくださいましたが、
 とうとう、使えるようになれませんでした。
 ですから、とても難しいことであると理解しております。
 ですが、もし可能であれば、
 少しずつでも、お箸の練習をさせていただけれは、と
 思っています。
 急ぎませんし、指導が可能なようであれば、でけっこうですから。」


そんなふうにして、S園での生活が始まり、
一ヵ月後のゴールデンウィークに、長男は帰宅してきました。
そのときのことです。
食事をするために、テーブルの、長男の席に座らせると、長男が、
「おはし…。」
と言うではありませんか。


耳を疑いました。
「のんたん、おはしがほしいの?」
と聞くと、
「はいっ^^」


えええええ~っ?


家族一同、びっくりです。
半信半疑ながら、お箸を持たせてみました。
すると、長男、そのお箸を握って、
ごはんをがしがしと食べ始めたではありませんか。


えええええ~っ?


家族一同、またまたびっくりです。
それは、お箸を「持つ」というよりも、
「握る」と言ったほうがよいような持ち方でした。


左手でお茶碗を持ち、その中にお箸を突っ込んで、
中のごはんを口にかきこんでいます。
長男は、たしかに、箸を使ってごはんを食べていました。


学校に12年間通い、担任の先生が、毎日つきっきりで指導してくださっても、
最後まで使えるようになれなかった、お箸。
そのお箸で、今、長男はごはんを食べているのです。


入所の日、私が先生に、
「お箸が使えるようになれれば…」
ともらしたひとことを、園ではしっかりと受け止め、
毎日、長男と練習してくださったのでしょう。
それにしても、入所してから、まだひと月足らずなのです。
S園って、すごい! と、あらためて思いました。


長男もまた、お箸で食べられるようになったことが得意だったのでしょう。
それを私に見せたくて、自分から
「おはし、ください。」
と言ったのだと思います。
そのようすから、
「長男の前向きな気持ちを大切にしながら、
お箸の指導をしてくださったんだな。」
ということが、うかがえました。


私は、胸がいっぱいになりました。
長男がお箸で食べているようすを見るのがうれしくて、
涙がでそうになりました。


「のんたん、すごいねえ!
 おはしでたべてるよ。えらいねえ。かっこいいねえ!」


いっぱい、いっぱい、ほめました。
長男も、得意そうな顔で、ご飯を食べています。
そして、食べ終わったあとは、2本のお箸をきちんとそろえて、
テーブルの上に置きました。
そんなことまで、おそわっていたんだなあ。


それにしても…。
本当に不思議です。
学校に通っている間、12年間をかけても、できなかったことなのです。
それがどうして、ひと月たらずでできるようになるのか…?
(けして、学校がだめだったのではなく、
 S園がすばらしすぎるのだと思います。)


S園に入所してわずか一ヶ月で、
早くも、長男のうれしい成長に驚かされた私達でした。
この「うれしい驚き」は、それから3年間、
現在にいたるまで、なんどもやってくることになるのですが、
このときにはまだ、そんなことは想像もしていませんでした。



その他の記録は、
のんたん日記18
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ガンになって
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MIYO'S WEBSITE(全盲難聴の、のんたんの育児記録)
http://limings.sweet.coocan.jp/
も、少しずつ更新しています。

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